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経済の研究No.117
値幅制限の合理性

 株式市場での値幅制限については、第15回指値取引と成行取引」で書きました。値幅制限の必要性は、一応「株価の急激な変動による投資家の不測の損害を防ぐために、1日の株価の動きを前日の基準値から一定の範囲に制限するもの」(ユニバーサル証券のウェブサイトから引用)なのだそうです。その趣旨は理解できるものの、値幅制限が健全な株価形成を妨げている例が増えているように見受けます。ちょっと事例を挙げてみます。

■ 16営業日連続のストップ安
 第113回で指摘したとおりですが、なみはや銀行が危ないようです。当初は特殊な事情で自己資本が不足しているとコメントしていた金融監督庁が、早期是正措置を発動したことも一因です。また元経営陣が再逮捕されるなどイメージダウンも影響しています。いずれにせよ、何らかの信用回復手段を講じる必要があります。ところが、株価は連日のストップ安で、7月2日現在で16営業日連続ストップ安の25,000円です。額面は50,000円なので、半値に成っています。
 とても失礼な話ながら、毎日ストップ安が続いて紙屑になるとしても、値幅制限の影響であと33営業日掛かります。逆に言えば、それまでに第三者割当増資の目途が付けば、立ち直れるということです。しかし50円額面の株式なら半値の25円から紙屑の1円になるのはたった1日です。この差は不公平ですね。株式の額面金額に関わらず同様に適用している制限値幅に問題があるはずです。
 少し話は外れますが、なみはや銀が成立したのは昨年の10月です。そして11月には株式上場しています。行政のお墨付きで立ち上がったはずの銀行が、1年足らずで行き詰まるのは明かな問題です。なみはや銀の経営陣も大変でしょうが、設立時の増資を引き受けた関係企業も大変なことでしょう。金融行政の責任はどうなったのでしょう。

■ 毎日値幅制限いっぱいのヤフー
 年初はあっという間に6倍の株価に跳ね上がったヤフーですが、6,000万円の株価を付けて世間の耳目を集めた関係で値幅制限が適用されました(本来は店頭市場なので適用を受けなくても良い)。ところが1,000万円以上の株価では、一律200万円が制限値幅です。しかもヤフーはほとんど浮動株が干上がっており、毎日の気分で取引が成立しています。例えば成行売りと成行買いが出され、どちらか多い方の値幅制限いっぱいで取引が成立しています。偶に固まった売りが出ることもありますが、普通は3〜5株の商いで推移しています。
 7月2日現在の株価は4,930万円ですから、わずか4%の上下でストップしてしまうのです。値幅制限を定めた当時、1,000万円以上の株価を想定していなかったにしても、値幅制限の幅を見直さない東証は怠慢です。
 しかしヤフーはしたたかです。この高値水準まで運んだテクニックも見事ですが、一旦は3,000万円を割り込んだ株価をよく持ち直したものと感心しています。週1回のペースで事業提携や新サービス立ち上げの発表を行い、市場に話題を提供し続けています。またヤフーの親会社ソフトバンクも同様で、子会社の高株価によって自社株価も急騰し、その含み益を活用して新規事業へ資金を投入し話題を提供しつづけています。
 一つつまずくと大けがですが、今のところは堅調です。なにしろヤフーの株価が上場株価の水準に墜ちるまでには31営業日掛かります。額面5万円が割れるまではさらに日数が稼げます。それまで含み益が担保されるので、何なりと手を打てるわけです。

■ 値幅制限の見直しと柔軟な対応
 制限値幅が狭すぎて健全な株価を形成していないことは、上の2例に限りません。現在の制限値幅の決め方がアバウトすぎることが一因です。例えば前日終値が100円だった株価は翌日50円まで下げますが、99円だった株は69円までしか下がらないというのは明らかに不公平です。100円だった株価がストップ安し、翌日ストップ高すると80円止まりというのも変な話です。場合ごとに制限値幅を変えるなどの柔軟な対応も求めます。
 さらに早期に1,000万円以上の制限値幅を細分化することや、50円額面と5万円額面では同値でも値幅を変えるなどの措置もあって欲しいです。でも本当は前日終値から見た変動比率で制限値幅を決める方向で検討して欲しいのですが・・・。

99.07.04

補足1
 どうしてこんな計算になるのかというのは、ユニバーサル証券さんのウェブサイトを覗いていただければ分かります。未承認のためリンクは張っていませんが、以下のアドレスです。
�://www.univ-sec.co.jp/univnet/un010602c.html

99.07.04

補足2
 本文で取り上げたなみはや銀の連続ストップ安記録は、22営業日で止まりました。なみはや銀が増資引受先に目途を立てたことが評価されたとのことですが、現在の120億円程度では難しいだろうと言われています。迂回増資などが行われないよう監督庁が監視を強める姿勢を示していることも一因です。
 ひとまず信用不安を回避して株価を戻さなくては、増資に伴う新株発行額が増えすぎて現実味を失います。しかし崩れる前の水準に株価を戻すにも20営業日近くが必要です。さて東証はどう対応するのでしょうか。

99.07.14

補足3
 補足2の補足をします。なみはや銀行は気配値を切り上げ続けて40,000円まで回復しました。補足2では「新株発行額が増えすぎて…」とありますが、商法は額面(5万円)金額以下での新株発行を禁じているため、増資を行うには額面以上の株価に回復させる必要があるようです。
 金融監督庁はなみはや銀の増資を見守る意向のため、取り敢えず売り物は消えて株価が回復基調に乗った感じです。無事に増資を実現したとして、果たして充足するのかどうか・・・。

99.07.29

補足4
 東証は整理ポスト銘柄に限って値幅制限を撤廃することを決定し、7日に整理ポスト入りとなったなみはや銀行に遡って適用することにしました。大証も東証の決定に追従する見通しです。整理ポスト入りは株価回復の余地が少なく、価格形成の方向性が明確であることから、値幅制限を行う意義が無いという判断のようです。
 ちなみになみはや銀行は22営業日連続のストップ安、16営業日連続のストップ高を記録し、大幅債務超過が明らかになった6日、破綻発表の翌営業日になった9日ともに値幅制限一杯のストップ安でした。値幅制限が撤廃されない場合、30営業日以上のストップ安が必要となるため、今回の措置で3営業日で寄り付きそうです。

99.08.09

補足5
 東証は新市場マザーズにおいて値幅制限の緩和を行うそうです。直接(新規)上場の際は、公開基準価格に基づく値幅制限を設けていましたが、価格の摺り合わせができず何営業日も寄り付かない危険があると判断して、初値が付くまで値幅制限を設けないと修正するそうです。
 値幅制限を事実上撤廃することで、初日に寄り付かせることが可能になりますが、これにはいくつか問題があります。一つは、売り物が出るまでイクラでも上昇を続けることです。公開株の旨味に目を着けた個人投資家が指し値でなく成り行きで買い進むためです。二つには、公募価格から大幅に乖離する危険が高いことです。初日の人気だけで急騰し、翌日以降大幅に値崩れすると信用問題です。逆に青天井に上がってしまうと公開株バブルが加速して不健全です。
 問題点は複数あります。まず公募株数や売出株数が少なく、ちょっと人気を煽られると実体からかけ離れてしまいます。売出株数に加えて大株主の冷やし玉を用意させることが必要です。また公平性には反しますが、機関投資家の参入や、指し株数に制約を課すことも必要です。しかし本筋的には、株式公開が尚早という気がします。マザーズは公開基準に株主資本の要件を課していませんが、もう少し自己資本を増強し株式数を増やしておく努力が必要でしょう。経営権の問題がありますが、ときには過半数の株式を売却する勇気も必要かも知れません。

 マザーズで初公開となったリキッドオーディオは寄り付きで公募価格の2倍610万円の初値を付け、その後も人気だけで買い気配を切り上げるばかりでした(ただし、その後500万円割れまで下落しました)。同じく初公開したインターネット総研は制限絵幅を引き上げても寄り付かず、公募価格1,170万円を大幅に2倍以上に上回っても初値が付きませんでした。25日現在で1,951株の買いに21株の売り、倍率100倍では比例配分もできません(年末には5,500万円に達し、公募価格の4倍です。インターネット関連だからですが・・・)。

99.12.26
99.12.31(修正)

補足6
 5日の東証で、懸念が現実問題に成りました。年末に急騰を続けていたソフトバンクの株価は、前日比25,600円安の76,500円まで大下げしたものです。4日まで5万円以上10万円以下の制限値幅5,000円の適用を受けていましたが、4日の終値が10万円を超えたことから、制限値幅が50,000円に跳ね上がり、混乱が生じました。
 東証は前日のナスダック急落を受けて、ソフトバンクがストップ安まで売り込まれる可能性を懸念し、気配値更新を大幅に遅らせたのだそうですが、これがソフトバンクへの不信感を増幅して、さらに売り物を誘ったのだそうです。結局出来高は156万株程度だったものの、たしかに一歩間違えば53,000円へ反落する危険もあり、東証の措置もやむを得ないところでしょうか。
 東証は現在の値幅制限の不備を認め、5月以降の新システムに、制限値幅の価格帯を細かくし、刻みをなだらかにする旨を改めて確約しました。値がさ株が増えてきているだけに、今回のような事態は当然に予測されたことですが・・・。

00.01.08
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