話が専門用語で埋まらないうちに用語解説を入れてみます。株式市場には株式を買いたい人と売りたい人が集まってきます。大部分の取引は証券会社が仲立ちしていますが、本質的には同じです。
株式を買いたいAさんは、1株1,000円まで出しても良いと考えています。狙った銘柄の前日終値(市場閉場時点の株価)が900円でしたので、とりあえず900円で買い注文を出します。同じ銘柄の株式を売りたいBさんは、1,000円以下では売りたくないので、1,000円で売り注文を出します。Aさん、Bさんの取引は値段が離れているので成立しませんが、このように希望の株価を指示して注文を出す取引を指値(さしね)取引と言います。
他に誰も参加しないとすると、いつまで経ってもAさんは株式を買えず、Bさんは株式を売れません。取引が成立するにはAさんが1,000円の買い指値とするか、Bさんが900円の売り指値とするか、両者が950円の指値にするか、いずれにせよ指値変更が必要です。
しかしAさんはどうしても月末までに買いたい事情があります。株主として権利取り(配当を受けたり、株主優待を受けたりするには決算月の末日までに株主になる必要がある)をする場合や、来月から株価が上がりそうだという情報を持つ場合です。しかしBさんが指値変更しない限りは買えません。こういう場合は成行買いという買い方をします。これは取引が成立するまで買値を一定時間毎に上げていく買い方で、いくらの値段で買えるかは成り行き任せです。市場では気配(けはい)値(正しくは特別買い気配)が表示されて買値の基準となり、その気配値で売り物が出るのを待ちます。気配値を上げる時間間隔と上げ幅は市場管理者が決定します。
逆にBさんに資金が必要な事情があった場合は、Bさんが成行売りをする場合があります。この場合は気配値が段階的に下がりますが、理屈は成行買いと同じです。ただし売値と買値が近い場合は気配値を出すことなく売買が成立します。成行買い又は成行売りによって成立する取引を成行(なりゆき)取引といいます。
また、前場(09:00-11:00の取引)と後場(12:30-15:00の取引)のそれぞれにおいて、開場直後に決まる株価を寄付(よりつき)値といいますが、寄付値で成行取引をすることを寄付取引または寄成(よりなり)取引と呼んでいます。逆に市場閉場時点の株価を引け値といいますが、引け値で成行取引をすることを引け取引または引け成取引と呼んでいます。ただし、引け値を付けずに閉場するザラ場引けもあり、取引が成立しないこともあります。
ところで、企業の業績が悪化した場合は、買いたい人よりも売りたい人が圧倒的に多くなります。とくに倒産の噂や決算見通しの下方修正があった場合は、著しく売りが大きくなります。しかも売りたい人は少しでも先に売りたいので成行売りを仕掛けてきます。この場合において、無制限に気配値を下げたのでは市場の混乱が大きくなりますので、所定の気配値まで下がったらそこで気配値が下がらなくなります。これをストップ安値といいます。基準値は前日終値であり、ストップ安までの制限値幅も前日終値を基準に決定します。100円未満で30円、200円未満で50円……1,000万円以上で200万円と定められています。逆に買いが多い場合も同じ値幅制限を受けてストップ高値までとなります。ストップ安、ストップ高は成行取引に限らず、指値取引でも同じです。したがって、制限値幅以上の指値は認められていません。
最後になります。成行売買のいずれかが多い場合は気配値が変わるだけで取引は成立しません。しかし後場の引け大引けになっても成立しない場合は、一定の割合で取引を成立させます。例えば売り株数100万株に対して、買い株数50万株であれば50万株の売買が成立したものとして、売り注文2に対して1の割合で均等に配分します。これを比例配分取引と言います。また買い株数が10万株と極端に少ない場合は、注文株数とは無関係に、注文口数や仲介した證券会社の頭割りで配分されることがあります。さらに買い株数が1万株と極端に少ない場合は比例配分されません。
98.03.14
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