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経済の研究No.13
年収カットなんて生ぬるい

 ついに自力で不良債権償却ができなくなった都市銀行や長信銀は、担保割れ不動産の公的機関買い上げ、公定歩合の引上げ中止、そして優先株の購入を含めた公的資金導入を求めています。
 しかしこの段階に来て、厳しい銀行批判が続いています。従来から言われてきた高すぎる銀行員の給料、大蔵省からの大量の天下り受け入れ、過剰な官僚・議員接待、総会屋への利益供与、など批判を受け続けている問題は多いです。だが銀行側は、これらの批判には尤もらしい理由を付けて解決を図って来ませんでした。すなわち、大金を扱う銀行員には不正の誘惑に負けないだけの高給が必要(実際は生活水準が上がっただけで、銀行員による不正はむしろ無くなっていません)、大蔵省とのパイプ役として大蔵OBの受け入れはやむを得ない(彼ら個人の能力でなく、人脈に期待したが、この危機には無力であることが明白となりました)、大蔵官僚や議員との潤滑剤と考えている(その潤滑剤が情報漏洩や不祥事隠匿にしか効果を生みませんでした)、大荒れの総会は日本を支える金融機関として許してはならなかった(総会屋を太らせることこそ、あってはいけないことだったはずです)、でありましょう。

 マスコミも最近は厳しい批判特集を繰り返し、公的資金の導入前にリストラ策を打ち出すよる圧力を加えました。まず安田信託銀行が行員の年収を平均10%削減と発表、つぎに日本興業銀行が同じく年収10%削減と役員報酬ゼロ、交際費半減などを発表しました。マスコミは概ね好意的で、自らの功を誇るような記事を掲載しています。
 しかし、良く観察しないといけませんよ。年収10%カットといいますが、これは平均給与月額の10%削減ではありません。事実、彼らはこれを否定しています。あくまで賞与を削って年収を10%減らすのだそうです。つまり「業績が良くなれば(公的資金が導入されて業績が安定すれば)賞与も元に戻しますから、行員のみなさんは安心して働いて下さい」と言うことに過ぎません。そもそも銀行は銀行員に支払う給与水準を公開していません。大蔵省は把握しているようですが、これまで発表されたこともありません。また表に出てこない諸手当のほか、ローン金利優遇、効率の企業年金運用なども行われており手厚い保護は相変わらずです。会社四季報には日本興業銀行の平均給与月額が500,005円と掲載されています。一般サラリーマンよりもかなりの高給だといって良いでしょう。社会のニーズはこれを削るようにということなのですが、これに手を付けずに逃げようという魂胆なのです。
 ちなみに発表されている平均給与月額は興銀が飛び抜けて高いです。第一勧銀で454,819円、東京三菱477,712円、日債銀で411,491円です。そして京セラは374,079円、トヨタ自動車423,198円、松下電産444,471円となっています。比較のため平均従業員年齢35歳前後の企業を抽出しましたが、興銀の平均給与月額は、日本産業を支える製造業各社の10〜20%も高い水準なのです。

 とりあえず平均月額給与を引き下げることが必要です。彼らはベアゼロを実施していると主張していますが、本当にそうなのかは公開されていないので不明です。そうでなくては、国民の税金で彼らの尻拭いはできません。また都銀は未だに株式配当を続けています。興銀、勧銀、さくら銀で年間8円50銭、あさひ銀で6円(予定)です。これを配当金額に換算すれば、興銀200億円、勧銀250億円、さくら銀300億円、あさひ銀140億円です。まず無配とし、配当原資を不良債権償却の資金に回すべきです。
 さらに言うならば、破綻債権となった企業への融資を行った行員にはペナルティーを課すべきです。彼らは報奨金や特別賞与などを得ていますから、それらの返金義務があるでしょう。

98.02.27

補足1
 都市銀行9行は、2001年度の従業員給与のベースアップをゼロとする方針を発表しました。これにより6年連続のベア見送りという形に成りました。都市銀行は公的資金の注入を受けていることや、不良債権処理に負担が大きいことを理由にしており、ようやく銀行員の高すぎる給与が世間並みに近づいてきたと言われているようです。
 加えて、退職勧奨やパートタイムへの切り換えなども並行して実施しており、これまで問題が大きいと言われた優遇制度を相次いで廃止するなど、積極的に人件費圧縮に動いています。これによって少しずつ競争力は増えているのかも知れませんが、当の銀行員の不満は大きくモチベーション低下が指摘されています。優秀な行員の行外流出は相変わらず多く、いびつな年齢構成による弊害も目立ってきているようです。
 銀行の経営陣は、より積極的な店舗統廃合、個店従業員数の削減に励んでいるようですが、数値目標だけでは業績改善に結びつかないため、給与面以外でのモチベーション向上策が待たれます。

01.04.22

補足2
#N度の大手銀行の閉鎖した有人店舗数のデータが出ました。2001年3月末の都市銀行と信託銀行の有人店舗数は2,771店舗(代理店・出張所を除く)で、2000年3月度と比較して167店舗の減少でした。増加した銀行はなく、横這いが日本興業銀行と三和銀行と住友信託銀行の3行だけでした。2001年4月からの金融グループ統合に絡み、みずほが18店舗、三井住友が75店舗、UFJが13店舗、東京三菱が23店舗、中央三井信託が17店舗を削減したようです。削減計画を大幅に上回るペースでの店舗閉鎖が増えており、リストラ効果による収益改善効果は出てくると思われます。
 これら有人店舗の閉鎖に並行して、無人店舗の閉鎖も進んでいるようです。コンビニ店舗を増やす一方で、個店での展開をやめる方向にあるそうです。

01.04.22

補足3
 相次いで経営統合を図ってきた4大金融グループですが、合併のメリットは合併差益を不良債権処理に回せるという程度で、コスト圧縮にまで手が回らないようです。本格的な不況の到来などでさらなるスリム化を求められており、4大グループ合計で23,000人削減する計画が発表されました(2001年3月末現在の108,000人に対する人数。2004〜2006年度達成見込み)。
 店舗統廃合や人員削減のスピードが追いつかない現状は、当面続くものと見られます。行員の給与カットにも踏み込み始めており、待遇面での厳しさがようやく本格化してきています。単純なリストラだけでは乗り切れない可能性も高いと言われ、さらなる再編も囁かれ始めていますが・・。

01.12.29
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