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雑記帳No.187
「御」という言葉

 「」は、尊敬語・丁寧語に使われますが、考えれば考えるほどに不思議な言葉です。「御」の読み仮名は「ミ」「ギョ」「ゴ」「オン」「オ」となりますが、それぞれ使われ方が違っています。
 まず「御」の例外から入ります。当用漢字に無い「馭」や「禦」の代用として使われる「御」があります。前者は御者・統御・制御、後者は防御でしょう。古くは、正しく区別されていたはずなので、以下検討には含めません。

 「」です。御名(みな)、御子(みこ)・御手(みて)・御心・御印・御霊は、全て神に関係があります。最上級の尊敬語であると思われます。
 「ギョ」です。御名・御璽・還御・御意・崩御・御衣は、全て天子(皇帝・天皇)と関係があります。神に次ぐ存在への尊敬語であるようです。
 「」です。御前(ごぜん)・御飯・女御という感じでしょうか。やや重い丁寧語だと思いますが、御芳名・御住所などは堅いので、ご芳名・ご住所などと平仮名で書き換えることが多いようです。ところで戦前に「ゴゼン(御前)会議」と称しましたが、正しい読みは「ギョゼン会議」なのかも知れません。

 「オン」は尊敬語に入るようです。「オ」よりは丁寧な言い回しでしょうか。御前(おんまえ)・御菓子(おんかし)・御名(おんな)などとあります。謙譲語という感じかも知れません。元来「オオン」と呼んで、「オ」より畏まった場合に使われたそうです。
 「」は一般的な丁寧語で、御子(おこ)・御手(おて)・御前(おまえ)・御菓子(おかし)と成りますが、「ゴ」と同様に平仮名で書き換えることが多いようです。お子・お手・お前・お菓子ですね。

 「ゴ」と「オン」の序列が判然としませんが、「ミ」「ギョ」「ゴ」「オン」「オ」という序列に成りますか。日頃何気なく使う「御」ですが、それとなく使い分けていて、こういうのは訓練なのだなぁ、と感じます。外国語の学習で複雑に感じる冠詞や活用形も、結局は訓練の賜で使えているわけで、外国人が「御」を全て「オン」と読んでしまうのと、根っこは同じなのでしょうね。

01.09.15
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