K君の私的曲紹介(第12回)
管弦楽組曲 第5番 ト短調 BWV 1070
■作 曲 家
伝J.S.Bach (1685-1750)
今回のタイトルを見て、「おや、最近はメジャーな作曲家指向かな」と思われた方は、学校の音楽の成績はなかなか良かったとお見受けします。
「あれ、バッハの管組って四曲じゃなかったっけ?」と思われた方は、バロックに結構親しまれている方でしょう。
「ああ、あの曲ね」とニヤリとされた方は・・・お止めいたしません、そのままご自分の道を突き進んでください。
種明かしをすると、今回ご紹介する曲は、長年J.S.バッハの作とされバッハ作品番号(BMV)までつけられたものの、最近の研究ではいとこのJ.B.(ヨハン・ベルンハルト)バッハか、長男のW.F.(ヴィルヘルム・フリーデマン)バッハの作と考えられるようになった曲である。
この曲は弦楽器のみの編成で、5つの楽章からなり、"Ouverture"(序曲)というタイトルが付けられている。当時、序曲と複数の舞曲などからなる組曲には、大抵 "Ouverture" というタイトルが付けられていた。これらは演奏に管楽器を含むか否かに関わらず、軒並み「管弦楽組曲」と訳されている(テレマンの作品に弦楽器のみで演奏される「管弦楽組曲」が多い。またちなみにJ.S.バッハ真作の4曲の管弦楽組曲の原題も"Ouverture"である)。そのようなわけでJ.S.バッハの「5番目の」管弦楽組曲、という曲名になっているのである。
筆者がバロック・前古典の世界に足を踏み入れたきっかけとなったのは、第1回でご紹介したようにC.Ph.E.バッハの曲を聴いたためだが、この趣味を確定的なものとし、抜け出せなくさせたのは、紛れもないこの曲である。高3の時に初めて聴いたときの印象は「うん、これぞバロックの中のバロックだよ」というわけの分からないものであった。筆者はこの曲を聴くと、なぜか絵画で見た中世ヨーロッパのイメージがわいてきて、理屈も何もなしに「う〜ん、バロックだなあ」と思ってしまうのである。
今回は大サービスで1,4,5楽章は全曲、2,3楽章は冒頭から再現部までをMIDIデータとした。聴かれた方が、「うん、バロックだ」とお感じになるかどうかは・・・自信がありませんけど。
第 1 楽 章
第 2 楽 章
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第 3 楽 章
第 4 楽 章
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第 5 楽 章
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演奏はやはりこれも古楽器の方に分があるか。陰影が魅力となっている曲なので、モダン楽器のおとなしい演奏ではいささか面白味に欠けてしまう。筆者が所有しているモダン楽器の演奏はパイヤールのレコードだが、これはどうも絶版になっているらしい。
古楽器ではムジカ・アンティカ・ケルンやロンドン・バロック、ターフェルムジーク・バロック管弦楽団の演奏がある。このうちターフェルムジークはW.F.バッハの作品集としてCDを出しており(SRCR 1975)、収録されている他の作品も一聴の価値あり。