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K君の私的曲紹介(第11回)
聖 な る 墓 に
■作 曲 家 Vivaldi(1678-1741)

 先日生まれて初めて人からCDを貰った。いろんな作曲家のいいとこ採り、というやつで、Vivaldi,Albinoni,Corelli の作品を納めた、レイモンド・レッパード指揮、イギリス室内管弦楽団の演奏である(CD-CFP4371, CDB 7 62628 2,海外盤なのでCD番号がよくわかりまへん、EMI製)。
 この中でいたく感動したのが、「2つのヴァイオリン、ヴィオラと通奏低音のためのソナタ 変ホ長調 F.XVI No.2“聖なる墓に”(原題"AL SANTO SEPOLCRO")」である。Vivaldi というとどうしても「調和の霊感」や「四季」が真っ先に出てしまい、それ以外の業績が影に隠れてしまいがちである。しかしこのように穏やかで美しい(Vivaldi らしからぬ!?)曲が殆ど無名の状態で眠っており、全くもってもったいない限りである(ただしソナタ集の中にはたいがい入っているようなので、これまで知らなかったのは筆者の怠慢ではあるが)。Vivaldi の研究は最近かなり進められているようなので、今後、隠れたる名曲がリリースされてくると期待できよう(余談だがこの10年間探し続けて未だ出会えていないVivaldi の曲がある。ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 RV275,Op.16-2。どなたかこの曲のCDをご存じの方があったら教えてください。お願いします)。
 なおVivaldi は“聖なる墓に”と名付けた曲をもう一曲残しているようなので、そちらも是非聴いていただきたい。筆者もこれから聴いてみるつもりである。

classic11.mid 

 Vivaldi は多種多様な曲を遺している、と筆者は信じて疑わない。しかし一般的には Vivaldi の曲はどれも同じようにしか聞こえない、という批判がある。あまつさえ、あるバロック音楽研究の大家による「Vivaldi は一つの曲を無数に編曲したにすぎない」という、ほとんど暴言ともいえる、その研究家の能力を疑わせるような発言を聴いたことすらある。それを言ったら、Beethoven の序曲や Bruckner の開始はみんな同じだ、とか、Mozart の主題はどれも主和音のドミソしか使っていない、などということもまかり通ってしまうのではないか。
 似たような編成の曲を集めた作品集をぶっ通しで聴いたら、それらが皆似たように聞こえるのは当たり前である(筆者もCorelli の合奏協奏曲を判別できるようになったのはごく最近である)。Vivaldi について批判的な方はそんな無茶なことはせず、とりあえずこのページのバックミュージックをお楽しみください。きっと新たなVivaldi 像を体験できるでしょう。

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