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政治の研究No.139
「有言実行」のひと

 日本の政治家は公約を守らない人が多いですが、日本の有権者はそんな政治家に一票を捧げる有り難い存在です。「他に有力な候補が見あたらない」ことを理由にして、選挙シーズンだけ公約をリップサービスする現職候補に甘いのが、多くの有権者です。その甘さが政治家を堕落させ、ますます公約を果たさせないのですが、悪いのは有権者か政治家か・・?

 小泉首相は、参議院選挙でも勝利を収めました。激しい逆風が吹いていた森政権から預かり、新しい執行部の下で勝利を得たのです。都議選に続いて二つ目の大勝利ですが、先行きは不透明だと言われています。小泉氏による性急な改革を望まない存在が、自民党内には沢山います。彼らは「守旧派」などと呼ばれますが、実体はもっと深く、自民党国会議員の8割以上だと言われます。総論賛成各論反対の議員が多いことや、官僚の意向を受けた族議員、有力な圧力団体の支援を受ける議員、今ひとつ現状に危機を持たないボンボン議員といった存在が、大きな抵抗になっています。
 小泉首相は、7月早々の遊説開始で「改革反対なら、小泉が自民党をぶっつぶします」と宣言しました。それを形式的でも受け入れた議員を全面的にバックアップし、橋本派も含めて応援を惜しみませんでした。しかし当選してしまえば、撤回するのは簡単です。例えば、一番議席を増やした橋本派では、派閥領袖の判断に従うだけで十分なのですから。「本当に、有権者の意志に沿った行動か」ということを考えて欲しいです。橋本派が改革反対に回るなら、応援を受けて当選した議員は派閥を抜けてでも首相支持に回るべきでしょう。

 小泉氏を古くから知る人は、彼を「有言実行の人」と呼ぶそうです。「ひとたび言葉に出したら必ず実行する人」だということです。思いつきで話をせず、言葉にしたときは熟慮の末の結論として出てくる人であるそうです。参議院は解散が無いのですが、小泉氏の敵に回るなら・・ぶっつぶされるかも知れませんね。反旗を翻すには、リスクを考慮する必要があると思いますよ、当選議員諸氏。
 多くの政治家に比較して、真面目な部類に入る人で、垢にまみれていないのがウリです。国民の人気が高いことは、その信頼できる人柄(マスメディアの虚像だとは思いますが・・)に因るところが大きいようです。YKKと呼ばれたニューリーダー時代、一番に政権から遠いと言われながら、一番にチャンスを掴んで首相になりました。変な駆け引きもなく、直球勝負で掴んだ行動力は評価されます。

 自民党はわずかに議席を増やしました。与党三党で安定多数も取りました。自民党は党として宣言したのですから、構造改革を実行するべきです。それを実行するチャンスを与えられたのですから、それに反対や抵抗をするべきではないのです。どうかアクセルとブレーキを並行して踏み込むことなく、構造改革へ邁進して欲しいものです。ここで有権者の期待を裏切れば、秋にもあると噂される衆議院選挙で大敗します。そして、それは自民党をぶっつぶすシナリオへと繋がるでしょう。
 これまで「有言不実行」の議員が多すぎました。そろそろ有言実行に転向し、自民党として有言実行を党是として頂きたい。それにしても、民主党は棚に向けて口を開けていただけで、何も努力をしませんでした。「不言不実行」というのも困ったモノです。

01.08.12

補足1
 小泉氏に自民党は潰せるのか、という疑義はあります。形振りを構わないのならば、首相の専管事項である衆議院解散を抜き打ちで行い、国民に洗いざらいをブチまけて、自民党の信用を失墜させれば済みます。無理な話ではなく、小泉新党や石原新党や民主党が受け皿となれば、自民党が弱小政党に転落するのは簡単です。参議院で過半数と言っても、政権から脱落すれば公明党も離脱するでしょうし、小泉シンパも離脱します。アッと言う間に、自民党は壊滅するでしょう。
 しかし小泉氏も自民党の一員であり、現在は総裁でもあります。どんなに改革が行き詰まっても、とことん党を叩くことはできないと思います。何よりも政局が混乱すれば、経済破綻へ行き着くことを一番知っている首相です。あくまで衆議院解散を武器にして、難しい舵取りを強いられるでしょう。過労で倒れれば、後を継げる人材も無いことですし、結局自民党はジリ貧になるのでは・・?
 自民党の守旧派と呼ばれる皆さん、本気で改革に協力しなければ、党にも国にも明るい未来は到来しませんよ。不本意かも知れませんが、改革に前向きに協力していただきたいものです。

01.08.12

補足2
 反対勢力は、静かな抵抗を示しているようです。橋本派の動向、官僚の動向をウォッチしていると、表向きは静観しているように見え、小泉首相の行動に理解を示すように見えます。しかし、裏では激しい抵抗を示しているそうです。首相周辺への激しい抗議・圧力、面従腹背での対談、婉曲な牽制球など、マスメディアも少しずつ批判体制に切り替わりつつあります。
 明確に敵に回る相手であれば、世論をバックに叩くこともできるでしょう。しかし、静かに包囲網を形成する反対勢力は、極めて狡猾に小泉首相の改革意識を骨抜きにしようと頑張っているようです。真面目な方向に頑張って欲しいものですが。小泉首相の主張が少しずつトーンダウンしているようなところも、心配です。「選挙のための小泉」で終わらないで欲しいものです。

01.08.12

補足3
 綿貫衆議院議長の諮問機関である「衆院改革に関する調査会」は、最終答申の中で、与党による法案事前審査の廃止、両院事務局の一部統合、永年在職議員に支給する交通費や功労年金の廃止、党議拘束の緩和、立法事務費の使途明確化などを打ち出しました。
 なかでも法案事前審査の廃止は、小泉首相の臨む改革を進めるためには必須なだけに、「有言実行」の首相にとって強力な武器になります。実現すれば、国会審議で与党内の議論も見られるわけで、党議拘束の緩和とセットになれば、政党政治という枠組みに収まらず、大きく活性化が図れる可能性もあります。
 これにより、密室で見えにくいとされる「国対政治」の排除にも繋がり、開かれた国会運営に近づくことでしょう。

01.11.30
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