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政治の研究No.135
都議会選では、小泉旋風

 6月24日、東京都議会選挙が行われました。即日開票の結果、自民党は純増5、公明は現状維持、民主党も純増9となりました。石原都知事の与党と言える三派が議席を増やしたことで、一応は与党基盤が強化されたことになります。これに対して、共産党は11減の手痛いダメージを受け、社民党は議席を失いました。変わりどころでは、東京・生活ネットワークが全員当選の議席6となりました。

 与党支持なしで就任した石原都知事でしたが、矢継ぎ早に打ち出した政策が都民に支持されると、自公民を与党として振る舞うように成りました。とくに自民党執行部の混迷を後目に、自民党議員を中心に石原新党構想も囁かれていたのが印象的です。ところが都議会選挙では、一転して、小泉氏一色。これまで知事との親密をアピールしていた議員達が、相次ぎ小泉氏に鞍替えしました。ポスター撮影、応援演説・・などなど。中には首相と並んだ写真を有償で配った議員もあったそうです。
 多くは便乗派でありまして、党員や国民の支持で首相になった小泉氏の人気に肖ろうと、恥も外聞もありませんでした。これまで石原知事にベッタリだったのは同じ理由です。とはいえ、自民党総裁選で小泉総裁誕生に尽力した都議員は少なくなく、党離脱・新党結成を切り札に団結した見返りと言えなくもありません。小泉氏は精力的に選挙演説を行い、数千人規模の街頭集会をいくつも演出していました。自民党が大勝利と言えずとも純増したのは、小泉首相あってのことで、森前首相では巧く行かなかったでしょう。

 それはさておき、今後の東京都政です。与党会派は躍進しましたが、これが石原知事を支持するかは、微妙だと言われています。現実に選挙では、石原氏の存在感が薄くなっていました。引退したある与党議員は、知事に苦言を述べて辞めたとも報道されています。これまでは有権者に信認された知事を追認する立場でしたが、今回は知事抜きで信認を得た議員が優位に成ります。知事の独断専行にブレーキを踏んでくる可能性があります。アンチテーゼの提言や、積極的な論陣を張る議員も増えそうです。知事は、予算削減やディーゼル車課税に意欲的ですが、その動向も不透明です。
 小泉氏も石原氏も与党にあって、改革派です。必ずしも対立ばかりでないでしょうが、スタンドプレーの目立つ石原氏がスポットライトを浴びなくなっているのも事実です。今回の選挙結果によって、石原新党構想をブチ上げるマスメディアも居なくなったようですし、少しは沈静化するのでしょうか・・? 改革は必要ですが、トップダウンばかりでなく、ボトムアップもあって欲しいと期待します。くれぐれも信認された議員が、保守的に換わらないことを祈ります。

 7月には参議院選挙です。都議会選挙のムードを「小泉旋風」と呼ぶ向きもありますが、参議院選挙でも同じ風が吹くかどうかは微妙です。とくに橋本派など非主流には、逆風が吹き荒れる可能性が大きいです。有権者は首相支持に換わっただけで、自民党支持であるはずもなく、都議選で民主党が躍進したように、小泉首相に遠い候補は大変でしょう。比例選は、かなり自民党有利だと思いますが、地滑り的な勝利を得るのは難しいのではないでしょうか。
 それにしても、民主党の冴えがありません。改革派の看板を小泉首相に奪われた形で、欠点ばかりが浮きだちます。たしかに都議会選挙では民主支持がありましたが、これは反自民票の受け皿であるだけです。注目の投票率も、過去最悪の前回よりは9%以上回復しましたが、依然50.08%です。有権者の興味が薄いことは間違いありません。これまで自民党は都市部で敗退してきましたが、少なくとも東京都では、都議会議員を中心に小泉親衛隊が活躍して巻き返すでしょう。
 「小泉旋風」は吹くのか吹かないのか、興味のある展開に成ってきました。

01.06.30

補足1
 都政では都議会議員の働きが、今ひとつ明瞭でありません。とくに与党会派の議員は、知事政策の追認を行うばかりに見えます。「口利き」に大活躍の議員も多く、不正融資問題で逮捕された都議もありました。今回当選した議員の多くは、現職候補でした。そういう意味では、体質が大きく変わるわけでも無いでしょう。有権者の多くは、小泉ブームの分身と見た彼らを支持したに過ぎないわけです。今後のチェックも欠かせません。
 日本経済新聞6/26朝刊に、編集委員の中西氏が載せたコメントは、「黒猫でも白猫でも小泉改革支持なら良い猫」という表現は、なかなか絶妙です。

01.06.30
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