|
政治の研究No.129 |
小泉自民党、民主政治への道 |
自民党は24日の本選挙により、第20代総裁に小泉純一郎氏を選出しました。自他共に自民党最強を任じていた橋本派は、領袖を担ぎ出しながらも惨敗し、非主流に転落するという結果に成りました。これで少しは自民党も変わると良いのでしょうが。。
今回の自民党総裁選は、画期的でした。これまで不当に低く扱われていた党員票の価値が3倍増になり、一気に執行部の予測を覆してしまったのです。発端は、古賀幹事長による「1県連三票案」でした(3月の党大会で提案)。党員の1万票を国会議員の1票と等価な扱いとすることに不満を顕わとした県連の動きに応えて、執行部案として提示した案でした。
各県連単位で予備選挙を実施し、1位となった候補が県連票を丸ごと獲得するという方法で、米国大統領選挙で採用されている選挙人獲得方式に似ています。党員数比例でなく、各県一律という不公平さはありましたが。支持率が低迷し、執行部不信が蔓延する中で、少しでも「開かれた総裁選」を演出しようとしたものだそうです。最大派閥の橋本派に属する幹事長は、地方締め付けで十分に勝算があると踏んでいたようです。
本来であれば、県連のバックアップを受けて当選してくる国会議員ですから、彼らは県連の総意を受けているはずです。国会議員としては国民全体への奉仕者であっても、政党議員としてはやむを得ないことです。そうであれば、県連が目くじらを立てずとも、議員達は自分たちの支持する人物を総裁に選出するはずです。そうならない所に、「永田町の論理」と言われる不可解なパワーバランスが存在します。
多くの県連幹事長は、三票案では不十分だとして、党員票と議員票の等価換算案(党員はKSD事件に見るように、ダミーも多いのが問題です)や、四票案などを主張して譲らなかったそうです。東京都議などは、地方の声を聞かなければ離党するとまで強硬だったようです。これに対して執行部は、県連票が141票であれば、その半分に加えて、橋本派と堀内派の議員票で、橋本総裁は確実と踏んでいたようです。
ところが、予備選の結果は執行部の予想を大きく裏切りました。小泉氏が41都道府県で1位を占めて123票を獲得し、実に87%もの得票率と成りました(党員・党友票の割り当ては237票なので、57%に相当)。対する橋本氏は15票、亀井氏は3票、麻生氏は0票。党員・党友の意志をひっくり返すことは、「党民としての民意」を無碍にすることでありました。県連ほかから、予備選の結果を尊重するように再三の圧力がありました。離党を仄めかす地方議員の発言が、新聞紙上を賑わせたりもしました。
結局は、亀井氏が本選での小泉氏支持に転じたこともあり、1回目の投票で小泉総裁が決定しました。橋本派は、意地を貫いて、本選で決着を求めました。下手な妥協は不利と見たものでしょう。しかし、田中派・竹下派・小渕派と続いた主流路線から、橋本派は非主流路線へと転落したわけです。
小泉氏は、無事に総理にも選出されました。派閥の解消を訴え、派閥のバランスを無視した組閣を断行しました。党三役の派閥離脱を求める一方で、橋本派を消極的に外す結果に成りました。公明・保守両党との連立は、とりあえず維持する妥協をしました。あとは、民意に従って、景気回復や構造改革、政治のクリーン化などにどれだけ積極的な姿勢を見せられるかが、問われるでしょう。
小泉総裁・総理の誕生は、退潮気味の自民党に大きな力を与えることに成りました。世論調査によれば、小泉内閣の支持率は80%を記録したそうです(一大旋風を巻き起こした細川内閣で70%台でした)。その期待に応え続けることができれば、日本政治にとってハッピーですが、大きく裏切るようであればアンハッピーです。自民党は一度解体し、魑魅魍魎を一掃することの方が優先されるべきであったと思います。何はともあれ現状維持ですが、国民政治も民主政治への道を歩んで欲しいと思います。
01.05.06
|
補足1
自民党の国会議員にも、今回の執行部と地元の乖離を強く懸念している人々があるようです。とくに若手議員は、最大派閥という理由で橋本派を選択している例が多く、今回の橋本氏敗北で次期選挙を強く意識しているようです。とくに予備選で小泉氏が圧勝した地域の橋本派若手議員は、戦々恐々とか。橋本派幹部からも責任問題を問われるでしょうし、地元後援会からも突き上げがあるでしょうし、大変な様子です。
とはいえ、次期衆議院選挙まで時間があるため、小泉効果を見定めてからでも十分間に合うという考えが支配的であるようで、一時期盛り上がった石原新党構想なども沈静化するのでしょう。派閥の存在は自民党の基礎岩盤でもあります、派閥解消は国民にとって好ましいですが、自民党を弱体化させるのは間違いないでしょう。早く民主党に代わる、もう一つの大政党を作る必要がありますね。
01.05.06
|
補足2
小泉首相は、国民に分かりやすい政治をコンセプトにするようです。6月14日から小泉内閣のメールマガジンを発刊すると発表しています。首相自ら執筆するほか、竹中経済財政担当相、石原行政改革担当相らの寄稿を受けるそうです。購読希望者は首相官邸ホームページで購読申込み(無料)すると、毎週木曜日に配信されるそうです。表題は、髪型に由来して「らいおんはーと」だそうです。在任中、最後まで続けられるのかは疑問ですが、前向きな姿勢は評価されるでしょう。
また地元横須賀で、公認HPが存在するそうです。私はまだ見ていませんが、軽いノリで始めたのに、本格的なファンサイトへの脱皮を図るのが大変だと紹介されていました。
01.06.03
|
補足3
補足2のメールマガジンは200万人以上の読者を集めたそうです。そのうち何割の読者が熱心に読み続けているのか、コンテンツの充実と同時に首相の人気持続も重要でしょう。
話は変わって、今後の地方票の扱いが決まったそうです。小泉首相誕生の決定打となった地方票は、各都道府県連が実施する党員投票で、各候補が獲得した票数に応じたドント方式にするそうです。その県連で過半数を制すると全票を獲得する前回の方式に比べて、投票数に応じた配分方法は一見公平です。しかし、組織票がある候補により有利に働くことは否めず、今回の決定には橋本派の意向が強く働いたそうです。
遭わせて操作任期を三年に延長(現在は二年)、立候補に必要な国会議員の推薦者数を20人に引き下げ(現在は30人)、さらにリコール規程も設けるそうです。リコールについては、国会議員と県連代表者の半数が同意すると臨時の総裁選が開けるとするもので、森前総裁が退陣を拒んだことの反省と、小泉総裁への牽制の両側面から設けるようです。
何にせよ、総裁選出の手順が明確になることは良いですが、民意が働きにくくしたい橋本派の要望が色濃いことが残念ですね。
01.12.31
|
|