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政治の研究No.33
宇宙は誰のもの?

 われわれ人類は太古の昔から宇宙を見上げてきました。その手が届かない世界に手を伸ばし、果てしない夢を抱いてきました。イタリア・ルネサンスの時代、天体望遠鏡が普及して宇宙の星々がぐっと手近なものになりました。しかし、それでも触れることのできない世界でありました。我々が宇宙へ飛び出す手段を与えてくれたのは、皮肉なことにナチス・ドイツが開発したVシリーズ・ロケットでした。つまり軍事技術が航空技術に、そして航宙技術に進化してきたのです。
 宇宙へ飛び出すことは、現在のところ一銭の価値もありません。我々の知らない事象が次々と明らかになりますが、そのことが直接的に金銭収入には繋がらないのです。しかしロケットを打ち上げるためには莫大な費用が必要です。その打ち上げコストは当然のことながら、その技術開発に要するコストも膨大なものです。そのコストを最も負担してきたのはアメリカ合衆国です。そうして得たものが制宙力です。

 すこし議論がズレますが、地上での戦争は低い場所よりも高い場所を占めた方が有利になります。そして陸を攻めるには海を制圧した方が有利です。海を制圧して得られる優位力が制海力です。さらに海よりも空の方が有利です。その優位力が制空力です。そして空よりも宇宙の方が有利です。その優位力が制宙力です。アメリカ合衆国はいち早く宇宙空間に監視衛星や攻撃衛星などの軍事衛星を打ち上げることで世界最大の優位力を手に入れました。ロシアはじめ欧州諸国も多少の軍事衛星は保有しているでしょうが、まず太刀打ちできないでしょう。かつてアポロ計画が行われていた当時のアメリカには、そこまでの意図があったのか疑問です。同時に訪れた東西冷戦が、誤った宇宙進出への途を拓いてしまったのかも知れません。しかし合衆国は絶対的な制宙力を手に入れてしまったのです。

 合衆国が宇宙の平和利用を考えたなら、制宙力は放棄しなくてはいけません。せっかく巨額の資金を投資して得た成果をタダで手放すことはしないでしょう。世界各国が宇宙へ進出し、民間も独自に進出を始めれば、これまでの宇宙の軍事利用の実態が明るみに出ますし、その清算費用も莫大となるはずです。しかも軍事的優位性が失われてしまう。逆説的ですが、軍事的優位性を保つために各国の宇宙進出を妨害する可能性もあります。日本も独自の衛星打ち上げを始めています。Hシリーズの国産ロケットがあり、衛星のドッキング試験も行っています。しかしその技術力は合衆国に遠く及ばず、肝心の駆動機構など心臓部はアメリカ企業が独占しています。しかも主要な技術は全てNASAに集められています。このままでは宇宙の平和利用は何年先になるか分かりません。
 まず合衆国を説得し、宇宙関連技術の公開を求めましょう。もちろん莫大な開発コストに見合う出費は各国で負担し合う必要があります。純粋な軍事利用技術を除いてに成りますが。その代わり、各国の宇宙開発技術も全てオープンにしましょう。もちろん無制限に公開するのではなく、各国の重工業会社間でフリーライセンス契約を結べばよいことです。そうなれば重複投資が避けられ、技術開発は効率よく飛躍的に進歩すると思います。。。

 などと言いますのは、生きているうちに宇宙旅行に出掛けてみたいからです。2001年には宇宙旅行が実現するはずだったのですが、まだまだ遠いようです。一国でできる技術開発は限界があります。例え世界最大の工業生産力を備えた国であってもです。それを独占することは一時的な国益になるでしょうが、人類としては大きな損失となります。何より宇宙へ自由に進出できるようになれば、現在の閉塞感を払拭し、新たなフロンティアの時代がやってくると思います。景気浮揚の一助にも成るのではないでしょうか。是非とも合衆国を説得して、民間人の宇宙旅行の夢を実現して欲しいと願っています。

 宇宙はアメリカ合衆国政府の所有物ではないはずです。我々人類みんなのモノです。いや、宇宙に生きとし生ける者の誰の所有物でもないのが本当でしょう

98.08.22

補足1
 ペプシが宇宙旅行プレゼントの懸賞をやっているそうですね。詳細は知りませんが夢のある話です。その費用は10万ドルという話でしたが、日本の景品法の関係で1,000万円を超える部分(1ドル145円とすれば450万円)は懸賞として貰えなくて自費負担になるとか、夢のない話です。

補足2
 宇宙開発事業団(NASDA)は、日本版スペースシャトルの試験機「HOPE−X」の打ち上げ用に、中部太平洋のクリスマス島(キリバス共和国内)にシャトル着陸場を作るそうです。。。既存の飛行場滑走路を拡充するもので、20年間無償貸与を受けるそうです。無人シャトルの実験とはいえ、その予算は膨大です。果たして平和利用が目的なのか、軍事利用が目的なのか・・・。

補足3
 米国実業家であるデニス・チトー氏が、ロシア宇宙船ソユーズTM31に乗って国際宇宙ステーションを訪問したのです。出発は4月28日で、到着は5月6日でした。ロシアに支払われた旅費は、推定2,000万ドル(約25億円)であるそうですが、宇宙でビデオや写真撮影に精力的に取り組み、帰国後のTVインタビューを積極的に受けるなどしているそうです。
 国際宇宙ステーションは、米国・欧州・日本も出資しており、ロシアによる抜け駆けには批判の声も出ているそうですが、快挙であったことは間違いありません。NASAは、映画タイタニック等で知られるジェームズ・キャメロン監督を運ぶ計画を発表しています。スペースシャトルは事故が少なくないので、どうか無事に監督を連れ帰って頂きたいものです。
 しかし、快挙は米国人が達成しましたが、ロシアが米国に先んじる構図は、変わりませんでした。ちなみにチトー氏は、元NASA職員であるそうです。

01.05.06

補足4
 宇宙開発事業団は、国際宇宙ステーションに勤務する宇宙飛行士の募集に、70名以上の応募者が応募していると発表しました。そのうちの6割近くは、会社員であるそうです。世の中は不景気ですから、夢に生きてみようということなのでしょうか。素晴らしいことだと思います。

01.05.07
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