前頁へ  ホームへ  次頁へ
政治の研究No.23
自民党総裁選…慨嘆

 自由民主党(以下、自民党)は7月24日、第18代総裁に小渕恵三氏を選出しました。旧小渕派のリーダーであり、現在は外相を務めています。かつて竹下元首相のいわゆる「七人衆」(小渕氏、梶山氏、橋本氏、羽田氏、小澤氏、あと誰だっけ?)の一角であり、隠然たる実力を蓄えてきた人物であります。外交と経済に関する実績は、マスコミが扱き下ろすほど実績がありませんが、その手腕は未知数です。米国での受けは悪く、この日のNY市場はアジア市場への不安感が広がって史上6番目の下げを記録したそうです。円安の拡大も懸念されています。
%の自民党両院議員総会で自民党総裁が選出されましたが、候補者は小渕氏のほか、梶山静六前官房長官、小泉純一郎厚相が立候補しており、党所属の衆参両議艶lと都道府県連代表47人の投票で決めたもので、小渕氏は過半数を大幅に上回る228票を獲得しました。ここで過半数が獲得できなかった場合は、1位と2位(2位が辞退すれば3位)の2名で決選投票のはずでしたが、あっさりと決まりました。密室会議で選出されたのでない分だけ救いはありますが、やはり旧派閥の論理が罷り通ったことは残念の一言に尽きます。小渕氏の公約はやや具体性を欠いていたように思いますので、今後は明確なビジョンを提示して奮起していただきたいものです。

 さて「自民党総裁 = 内閣総理大臣」とのイメージがあるものの、自民党総裁が内閣総理大臣に成ると保証されているわけではありません。一応は比較第一党の党首が内閣総理大臣に選出されるのが普通ですが、かつて野党時代の河野総裁は内閣総理大臣に成れませんでしたし、自社さ連立内閣では社会党の村山党首が内閣総理大臣でありました。また何度か総理・総裁分離論が議論されて内閣総理大臣と党総裁に別の人物を選出しようとした時代もありました。今後、無事に小渕新総裁が内閣総理大臣に選出されるかどうかは、自民党が一枚岩で有り続けるかどうかに懸かっています。今回の総裁選では過半数を得たものの、梶山派と小泉派のいずれかが党を割ってしまうと自民党が過半数を割り込んで野党転落の危機が訪れます。党を割らなかったとしても、内閣総理大臣指命選挙で欠席、白票投票などをすれば同様です。これを回避するには梶山氏と小泉氏に内閣の重要ポストを与えて政権内に取り込むことが必要です。かつて三木元首相の時代に、同様の危機が訪れても無事に乗り切った実績があります。

 国民が今求めていることは経済危機の回避と不況からの脱出です。勝利を得た小渕派が勢いに乗って蔵相・外相・通産相を独占することは止めていただきたい、と思います。今回既に噴出した派閥の論理だけで主要ポストの割り振りを行うことは、日本政府の自滅を意味します。とりあえず蔵相には経済市場からの呼び声が高い梶山氏の登用を考えてみられるのはいかがでしょうか。もしくは宮澤喜一氏の復活でも歓迎です。能力と適性のある国務大臣の登用、そして強力な権限委譲、この二点が(これから実現するであろう)小渕新内閣に求められることです。繰り返しになるが、そのためには両氏の取り込みと、新総裁としての懐深さを示すことが必要です。
 新総裁の選出で国民に大きなため息を付かせてしまったことを猛省し、組閣においては国民から喝采を浴びるような国務大臣の選択をしていただきたい、というのがポン太の願いです。

98.07.24

補足1
 ご存じのように7月30日に発足した小渕内閣の大蔵大臣には宮澤氏が選出されましたが、小泉氏も梶山氏も入閣しませんでした。ちなみに首相経験者が入閣するのは吉田茂第一次内閣の幣原喜重郎氏以来とのことです。さらに大蔵大臣となるのは2/26事件で暗殺された高橋是清氏以来だという話です。

前頁へ  ホームへ  次頁へ