「オケピ!」を観ました

 三谷幸喜の「オケピ!」が再演されたので、観てきました。初演も今回も、チケットが入手できない超人気でした。今回は、高額な手配手数料を払うことで、ようやく入手しました。結論から言えば、これは失敗でした。話題性が高く、名優も使っている割には、三谷氏の自己満足的な作品・・・作品の完成度も低いと感じました。

大いなる駄作

三谷幸喜の芝居は、今回が初めてです。パルコと提携して多くのストレートプレイを生み出している売れっ子ですが、ミュージカルの参入は本作が初めてです。しかし現実には、お得意の芝居にソングナンバーをぶち込んだ荒っぽいもので、ミュージカル俳優も使いますが、十分に活かしたものでありません。活かすつもりも無かったようですが・・。

作・演出家としての洞察力は、極めて優れている人だと思います。ミュージカルの在り方を厳しく批判し、ミュージカルのオケピに痛撃を与えています。敢えて「ミュージカル」を名乗り、チラシに「ミュージカルを愛する すべての人と、そうでもない すべての人へ」というコピーを打ったのは、「ミュージカルファンへの挑戦」であったのでしょう。演出家や、大女優に対する皮肉も飛び出し、藤堂という男にはミュージカルを小馬鹿にしたソングナンバーを歌わせています。

まぁ、好きずきで構わないのですけれど。1万円ものチケット代を取りながら、バカ芝居を見せられる客の気持ちは、考慮していないようです。しかも、休憩込みの上演時間が「3時間45分!」でした。「レ・ミゼラブルより短い」と嘯いていましたが、かなり非常識な長編です。上演時間が長いから、チケット代が高いのかも知れませんが・・・。一流のエンターテイナーによる「大いなる駄作」でしょう。

スパゲッティー芝居

ソングとダンスは、それなりにありました。変なソングばかりですが、作家の言いたいことは分かります。「笑いたい奴だけが、笑えば良い」という姿勢が、鮮明でした。観客を楽しませるよりも、目一杯に遊び倒した感じです。次々に展開するシーンは、まさしくスパゲッティー状態です。個々では面白くとも、全体的な流れも纏まりもありません。変わり者たちが次々に突飛な行動を取り、ひたすら混沌の世界を繰り広げます。

演じる方はともかく、観る方には疲労を強います。冗長な場面も少なくなく、諄さも目立ちます。長い一幕を終え、二幕が始まった段階で空席が増えました。二幕途中に退出した客もありました。ソワレは「18時半開演、23時終演」と明示してありましたが、23時になっても終わりませんでした。ダラダラと会話で繋いでいくために、時間管理が十分できないのでしょう。演劇雑誌は、競うように作品を褒めていましたが・・三谷幸喜氏に気遣いしすぎだと思います。

さて、三谷氏の本意は・・? ミュージカルに流れる芝居ファンを、馬鹿と呼んで憚らなかったそうです。それを嘲弄するのが狙いだったのでしょうか。もう少し上手に批判すればスマートですが、遠吠えに終わったような感じもします。

 三谷ファンには、十分に満足できた作品でありましょうから、劇レポは書きません。1万数千円を払わされて、4時間近くを劇場で拘束されただけで、もう十分にウンザリです。一つの勉強になりましたので、コラムのみに留めます。