三年半ぶりに、劇団四季の「ライオンキング」を観ました。脚本と演出の課題は、多分にブロードウェイの原作にあるそうですが、全体に迫力も出て、パワーアップした印象を受けました。さすがにロングランを続けてきただけのことがあります。劇団四季は「自家薬籠中」に収めた感じです。
じかやくろうちゅう
何だか聞き慣れない表現ですが・・・「自分の家の薬箱の中」という程度の意味です。。いわゆる市販薬でなく、当家秘伝の妙薬というイメージでしょうかね。その独自の調合技術を自分で持っている、そんな感じです。昔の人は、自分で煎じ薬を作ったり、丸薬を作ったりして、常備していました。ときには印籠に収めて肌身に付けたりもしました。他人の真似でない、自分オリジナルの薬とすることを、「自家薬籠中の物とする」と言ったようです。
劇団四季は、ディズニーがブロードウェイで上演開始して間もないウチに、「ライオンキング」を輸入しました。高い評判を利用して派手な宣伝を打ち、程なく東京・大阪の同時上演まで演りましたが、結果的に人材層が薄くなってツマラナイと言われました(私のコメントも同様ですが)。しかし、さすがに4年もロングラン上演すると、翻訳の拙さも少なくなり、演出の不自然さも減少し、アドリブまで交える余裕が感じられます。
キャストの芝居もダンスも、ブロードウェイのコピーに徹するというよりも、四季オリジナルを見せようという感じに変わっています。上記した余裕も、長らく自分たちで改善してきたという自負があってのことでしょう。つまり、劇団四季は「ライオンキング」を自家薬籠中に収めたわけです。
スピード輸入を強めているけど・・?
劇団四季は、以前からブロードウェイ物を多く上演してきました。「キャッツ」「オペラ座の怪人」「美女と野獣」「コーラスライン」など、依然として上演を続けている作品が多数あります。数々の賞を獲得し、超人気ロングラン作品との評判が固まった作品群は、看板好きの日本人客相手には、確実で美味しい選択です。下手にオリジナル作品で外すよりも、安全確実です。
しかし「ライオンキング」は、ディズニーの新作だけに評判が上々でしたが、駆け出し直後から輸入を決めたようです。手塚治虫の「ジャングル大帝」問題で話題に成ったことも影響し、派手な舞台装置と演出で話題をさらいました。しかし、東京・大阪の同時上演は大いなる賭けでもあったでしょう。その後に「壁抜け男」という異色作の輸入もしましたが、「コンタクト」、「マンマ・ミーア」とスピード輸入作品が増えています。長期定番化するような作品群ではありませんが・・。
ただ、全体に四季の自由度が高くなっている感じがします。忠実に原作の日本語版を演じてきた旧作に較べると、日本人向けのカスタマイズも進んでいるようです。単に翻訳や訳詞が良くなっただけでもなく、演出にも違いがあるような印象です。日本における劇団四季の地位が認められて、作品変更の裁量権を大きく得ているのでしょうか・・? いい傾向だと思います。
ただ今から思えば、現在に観せている作品と、昔に観せていた作品とは、質の面で大きなギャップがあったということです。当時の質から言えば、割高なチケット代を取っていたという話になるでしょうか。スピード輸入も結構ですが、上演当初からチケット代に見合う質を担保して欲しいです。
そういえば、「クレイジー・フォー・ユー」もパワーアップしていました。
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