ミュージカルにも哲学を

ブロードウェイの名作は、必ず主張する何か、が含まれています。社会批判、風刺、思想・・・脚本家の哲学が盛り込まれるかどうかが作品全体の質を決めているようです。

哲学は必要か?

ミュージカルは、歌って、踊って、ストーリーがあれば良いかも知れません。でも、哲学がない作品は、良くある作品のコピーに見えたり、思いっきり内容がカラッポだったり、物足りなさがあったり、していると思います。

哲学はオリジナリティを主張するのに必須だと思います。作品に重みや深みを加え、立体的な作品に仕上げてくれるはずです。もちろんのことながら、脚本家本人がその気でも、盛り込まれた哲学が理解されないこともあります。哲学を盛り込むと言うことは、観客に分かり易く伝えることも必要でしょう。

哲学は多すぎないで

何のために作られた作品なのかという主題が、脚本家の哲学です。その哲学を脚本家が自ら咀嚼して体系化したかどうかを試されると言っても良いでしょう。従って、上っ面だけではダメですよね。

さて盛り込まれる哲学・・・せっかくの公演だからと沢山つめ込むと意味不明になります。哲学は全体を通しての大黒柱です。二本も三本もあるとガチガチな作品になって、どこかに無理が掛かってしまいます。ギクシャクした展開や唐突な展開を生じて、観客を混乱させるかも知れませんね。

哲学は見えすぎず

だからと言って、真正面から哲学を晒されると大変です。戦争をテーマにしたり、麻薬をテーマにしたり、退廃や退嬰を前面に出したり・・・あまりに粗雑な展開では興醒めしてしまいますし、何より作品が重くなりすぎます。哲学は見えすぎないことも必要です。

ブロードウェイの名作では、重く成りがちな哲学の部分を上手に作品に隠しています。前後に明るいナンバーを入れたり、ストーリー的にクライマックスの直後にぶつけてきたり、しています。観客を舞台に惹きつけているときにサッと哲学を見せて、素早く次の展開に進んだりして見せます。ダラダラと自己主張を続けるものは名作と呼ばれていません。

せっかくの哲学も観客に正しく伝わるとは限りません。誤解を生むこともありますし、無視されてしまうこともあります。より伝えやすい方法を研究できるかどうかが脚本家と演出家の腕の見せ所なんだと思います。あとは唯我独尊を止めるのが有効かな。