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経済の研究No.115
蔓延る無人借金マシーン

 消費者金融の融資金利が高すぎることは、第4回街金の金利は高すぎる」でレポートにしました。しかし、消費者金融大手の躍進は、止まらないようです。業界首位の武富士は前期(1999年3月期)の営業収益が前年比9.3%増の3,370億円、経常利益が同22.6%増の1,800億円、当期利益も同27.2%増の850億円となっています。相次いで店頭公開・株式上場を果たした大手各社の株価は上場来高値を更新中です。
 首位の武富士、二位のアコム、三位のプロミス、四位のアイフル、五位のレイク・・・消費者金融業界は大手による寡占化が進んでいます。その背景には超低金利を活かせる資金調達力、株式公開による信用拡大、長引く不況による新規顧客増大などがあるようです。

■ 消費者金融にも競争原理を!
 今でこそ「消費者金融」などと呼ばれていますが、かつてはサラ金と呼ばれ、悪の元凶のように言われました。1984年にはサラ金の借金を苦に自殺する人が絶えず、社会問題化したことがありました。危機感を抱いた行政は法外な金利に一定の枠組みを与え、サラ金を生かす方向に規制を掛けました。
 しかしその後、消費者金融の寡占化が進む中で、枠組みの見直しは行われないままです。1984年に大騒ぎした当時の自己破産者は2万人でした。1990年までは年1万人以下に抑制されましたが、バブル崩壊後は急上昇して1997年は7万人、1998年は10万人に達しました。今では消費者金融も市民権を得てしまい、大きすぎてコントロールが難しい状況にあります。
 安易な自己破産が増加していることは社会問題であり、何らかの対策が求められています。サラ金規制法の上限金利40.004%を15〜20%に引き下げようと言う提案を民主党が行っています。消費者金融大手の調達金利が2.5〜3.0%であることを考慮すれば当然の水準ですが、おそらく与党は同調しないでしょう。あまりに民間企業を圧迫するためです。
 街金の上限金利は29.2%、消費者金融が27.5%、カード会社のキャッシングが17.8〜24.6%、都銀の無担保ローンが12.5〜13.5%(優良顧客に対する金利優遇は含みません)です。銀行などの無担保ローンを積極的に拡大させて競争原理を導入する方が有効でしょう。競争原理の導入には、与信方法の見直しも重要だと思いますが、不可能ではないでしょう。

■ 借金とキャッシングは違う?
 消費者金融による努力は、サラ金のダーティなイメージを払拭することでした。実態は変わらないものの、店舗をクリーンなイメージに保ち、派手で話題性のあるCMを打ち出し、キャッシングという新概念を導入しました。もはや消費者金融からの融資は借金でなく、お財布代わりのキャッシングなのだと・・・。
 また店舗で従業員と対面させると敷居が高く成りすぎます。アコムが試みに導入した無人店舗は大当たりし、新規顧客の拡大に大きく貢献しました。1995年3月には61台だった「無人借金マシーン」は、1998年3月に4,653台に激増しています。このうちアコムが1,108台、武富士が1,063台、プロミスが977台、アイフルが800台と大手で大部分を占めています。アコムでは有人店舗を削減して人件費削減に余念がありません。
 無人借金マシーンは、借金の罪悪感を排除することに成功し、次々に自己破産予備軍を育成しています。一旦無人借金マシーンで作られた借金カードは、自社ATMのほか提携ATMで安易にキャッシングできます。武富士の自社ATMは1,253台、提携ATMは17,604台です。アコムやプロミスも同規模のATM網を整備し、さらに郵貯ATMとの提携を狙っているそうです。
 いくら言い繕っても、キャッシングは借金です。年利30%の金を安易に借りて使うことがいかに危険か、消費者は自覚するべきです。銀行は安易に資金を貸してくれませんが、それは身丈に合わない借金だからです。収入と地位が確保できれば自ずと銀行も融資してくれるようになります。賢い消費者を目指すべく、消費者金融とは手を切りましょう。

■ 消費者金融も自粛・自制を
 近頃は大手がCM等の自粛に動いていると言います。ただし一時に比べての話で、今でもインパクトの大きいCMを打っています。広告費を惜しまなくて良いだけの潤沢な資金があるから当然ですが、いずれは新規顧客が頭打ちに転じて自らの首を絞めかねません。所詮、消費者金融はサラ金のままです。長い間取引を継続してくれる優良顧客は望むべくもありません。30%という暴利では、いずれ自己破産する顧客ばかりです。
 まずは与信の方法を改めることです。消費者金融の与信は厳しいと言いますが、それは本人確認と他社借入の把握という点だけです。1人50万円で、上限200万円を目安としている業界では、その人の可処分所得などは考慮しません。自社が貸さなければ他社が貸すからと言う論理で、与信枠があれば貸してしまいます。本当に返済能力があるのかどうかを見極める与信をするべきです。いっそ1社で1人200万円というリスクを負ってみることも必要でしょう。
 つぎに大手が率先して金利を下げることです。悪い言い方をすれば、顧客を細く長く活かす方法を考えるべきです。そのうちに顧客の金回りが良くなって優良顧客になる可能性もあります。一律に金利を下げる必要はありませんが、相手の返済能力や個人的信用力に応じて弾力的な融資を行って欲しいです。
 本当に消費者のことを考えないのであれば、消費者金融と名乗る資格はありません。単なる街金と50歩100歩です。無人借金マシーンはコスト削減に貢献し、新規顧客の獲得に効果があるでしょう。しかし不良客が混在する問題もあり、収益面でも悪影響を与えると思います。優良客と共存共栄を図るのなら有人店舗の良さもありますから、蔓延る無人借金マシーンの処理も含めて経営路線の修正を求めます。
 アコムを始めクレジットカード事業を手掛ける消費者金融が増えているようです。クレジットカードの顧客と消費者金融の顧客は、あまり重複しません。広い顧客層をカバーするとも言えますが、クレジットカード事業は薄利商売です。自己資金での事業展開でない以上、薄利商売に手を染めすぎるのも問題です。大手も危機感を抱いているということでしょうか。

 まずは健全な消費者金融市場を構築することが急務です。行政による規制も良いでしょうし、業界による自粛・自制も良いでしょう。しかし何より賢い消費者の出現こそが待たれます。酷な話かも知れませんが、安易なカード破産やローン地獄による自己破産には何らかの縛りを設けることも必要でしょうか。
 この辺り、読者の皆さまのご意見はいかがでしょう?

99.06.15

補足1
 消費者金融が好調である裏側で、やはり銀行の貸し渋りがあるようです。バブル期まで競うように拡大していた無担保個人ローンの残高が、1992年の20兆円から、1999年は12.4兆円まで減少しているそうです(日本経済新聞07/18)。消費低迷・雇用環境の悪化という背景はあるものの、金融機関が個人の信用リスクに敏感となり貸出を抑制しているのだそうです。金融機関は相変わらず個人リスクを読めないと言うところでしょうか。
 しかし、消費者側が教育ローンや自動車ローンの借り控えを進めているという現実もあるらしく、一概には言えないようです。ただし無目的ローンもピークの8兆円から5.3兆円へ縮小していますから、消費者金融へシフトさせられている消費者も多いのかも知れません。

99.07.18

補足2
 連年好成績を挙げてきた消費者金融ですが、失業率が5%代後半に達してきたことを受け、新規顧客の開拓に慎重になってきているそうです。具体的には、貸付基準の厳格化、メリハリのある貸付などと曖昧ですが、業界トップの武富士では成約率の抑制、プロミスでは他社借入者の絞り込みなどに取り組んでいるそうです。
 大手4社の平均貸出金利は24〜26%、利ざやは21〜25%であるそうで、経費は半分程度。今後の資金調達に不安を残すものの、まだまだ順調です。将来の貸し倒れリスクに備えることで、規模拡大よりも収益維持にシフトしたいということなのでしょうか。貸付高も経常利益も2桁成長は続く模様ですが、伸び率は2002年3月期でも鈍化する見込みだそうです。

01.12.31

補足3
 近頃では、大手銀行も消費者金融に参入してきています。依然として、高利でも顧客の集まる消費者金融は、旨味ある金蔓ということでしょう。これまでは、消費者金融に間接融資するのが主流でしたが、業界のノウハウを集めつつ、資本にモノを言わせての参入です。「テラ・ネット」問題も含めて、軋轢が増しています。
 また、東京三菱銀行は「レンタルキャッシュ」なるネーミングにより、さらに「借金」へのしきい値を引き下げるイメージ戦略が展開されています。キャッシュ(現金)をレンタルするとは、日本人らしい発想ですが・・実像を見事にボカしています。

 近頃は、消費者金融を利用している一定収入ある個人を対象に、自行への借り換えのDMを出したり、住宅資金融資に際して消費者金融との手切れを指示したり、明らかに消費者金融での「ホワイト情報」を不正流用している銀行があると聞こえてきます。事実であるとすると・・単なる新規参入以上に問題であると思うのですが、改善されるのでしょうか。

02.06.15
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