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経済の研究No.94
パクリ と システム金融

 長い不景気の出口はまだまだ見えて来ないようです。大手銀行への公的資金注入はほぼ決まりましたが、彼らが積極的な貸出に転じるのはまだまだ先の話です。ここ2,3年の設備投資の手控えてきた影響が、実体経済に現れ始めています。政府は1998年で景気の底は終わったと発表していますが、信じるに足るだけのデータは提示されていません。
 これだけ不景気になり、しかも先行きが暗いとなると「おいしい話」に乗ってしまう経営者が増えるかも知れません。今の時代、詐欺かマルチで無い限り儲かる話は無いはずです。今回は、零細企業を狙って仕掛けられるというパクリとシステム金融の話をしましょう。

 パクリの対象は、商品、手形、有価証券などがあります。手形パクリは普通零細企業自身が巻き込まれて起こす犯罪ですし、有価証券パクリは証券屋だけの話ですので、ここでは商品パクリ、とくに「取り込み」と「追い被せ」について書きます。
 「取り込み」は、商品を納入させておいて代金を踏み倒すことです。普通の企業を装って普通の取引を始めます。サンプルを取り寄せての単品小口を即金払いで始め、少しずつ品種と数量を増やしてきます。やがて決済の手間などを理由に、半金半手(半分を現金で半分を手形で支払うこと)から、どんどん手形の割合が多く成ります。架空の取引先の支払いの悪さなどを理由にしてくることもあるようです。最後に大口の取引を装って納入させ、全ての商品を持ったままドロンしてしまいます。もちろん手形は不渡りになり、最悪の場合、倒産に至ります。取り込まれた商品は、バッタ屋を経由して流通しますが、尻尾を掴めない場合がほとんどです。最近は、大手企業を装って、最初から大口の取り込みを仕掛けることもあります。
 「追い被せ」は、ちょっと違います。零細工場などを訪れてサンプル品を見せ、その商品の大量発注を仕掛けるものです。おいしい融資話などとセットになっていたりしますが、とことん無理をさせた上で難癖を付けて、工場経営者をパンクさせる手法です。安値で買い叩いたり、善意の第三者(もちろん仲間)が現れて引き取りを持ちかけたり、高利融資のカタに代物弁済させたりして、タダ同然で商品をパクってしまうのだそうです。
 不況の最中ですし、仕事を貰うという負い目を感じるためか、「取り込み」や「追い被せ」に填められてしまう経営者は多いと聞きます。しかし、最近のパクリ屋は底の浅い相手も多いようですから、とりあえず相手の信用調査ぐらいは慎重にやっていただきたい、と考えます。

 システム金融です。こちらは勉強不足でよく分からないのですが、一応聞きかじった話で書きます。大阪ではトイチ金融という金貸しがあります(漫画の「ナニワ金融道」で有名になりました)。事業資金に詰まった企業に、10日で1割の利子を払わせる高利の金貸しです(もちろん違法)。しかし一応は顔を合わせて手形を切ったり契約を交わしたりします。システム金融というのはその上を行くそうで、1か月で5割、10割の高利を取るそうです。登録業者である街金の場合は、普通に審査をするため即日に大金を借りることは難しいですが、システム金融はFAXで申し込めば即日に銀行口座へ振り込んでくれます。支払いは、指示された金額を書かされた手形や小切手で決済されますが、業者によって違うようです(局留め郵便書留の発送通知書をFAXすると、指定口座に入金されることが多いそうです)。
 資金繰りを凌ぎたい零細企業は、借りられるかどうかに関心が向いてしまうため、ついつい金利に注意が行かず借りてしまうといいます。結局はその返済のため、別のシステム金融から借りることになり、最後にはパンクをします。積極的な取り立ては無いのが救いかも知れませんが、最終的には何もかも無くしてしまうことになります。やはり高利の金は手を出さない方が賢明です。システム金融に填れば、次々に勧誘の電話もあるそうですし、とにかく助かりません。それよりは企業を畳む決断をした方がマシかも知れません。血の滲む思いで作り上げてきた信用を、最後の最後で大潰ししないことを願います。
 ところで、このシステム金融が取り立てに動かないのは何故でしょう。一つには無登録業者だということが理由です(登録業者なら即免許取消なので)。二つには多少の貸し倒れは応えないということも理由です(とにかく高利なので)。三つには勧誘相手の名簿が秀逸ということも理由だと言われています(金融機関から流出する、これまで律儀に返済していた顧客が中心なので)。うっかり借りてしまったら、弁護士に泣きつくと良いそうです。最近は手口も知られてきたので、多重債務に陥る前に手を打って下さいね。

 この不況はまだまだ終わりそうにありません。知人も親戚も無くしてしまう前に、商売替えや廃業を考えることも必要かと思います。いつか景気が回復して・・・という甘い考えは禁物です。もちろん頑張れるものなら頑張って下さい。業績が上向いてくれば、あるいは突破口が見いだせるかも知れませんので。でも「おいしい話」には気を付けましょう。

99.02.13

補足1
 毎日新聞の記事に、システム金融の特徴が紹介されていましたので、ご紹介します。(1)都道府県知事などに貸金業者として登録していない(つまり「ヤミ金融」)、(2)電話・FAX・DMで勧誘、(3)手形・小切手を担保にするが、郵便局留めで足が付かない、(4)法定利率を超えるため、無価値・低価値の商品を売買した形式を整える、(5)数か月で電話番号や屋号が変わる、(6)共有の顧客データを持っている(登録料を払って業者はシステムに加盟するらしい)の6点だそうです。

99.02.17

補足2
 システム金融は年利600%なんてのがザラにありますが、その手前で高利の「商工ローン」に填るのが一般的であるそうです。商工ローンは法定金利を上回るもの年利40〜50%で、連帯保証人も取るそうです。また金銭消費貸借の公正証書(これがあると裁判で必ず負ける)や抵当権・代物弁済設定契約の登記委任状などもしっかり抑え、がんじがらめにするのだそうです。
 システム金融と違って夜逃げは難しいそうです(保証人も300〜500万円を一人の目安にして、近い親戚などに設定させる)。弁護士に相談しないように監禁なども平気でする。これ以上は絞れないと分かるとシステム金融を紹介して全額回収する・・・というボッタクリなんだそうです。年利40%ならほんの1か月借りてみようと思わせるのでしょうが、巧みに資金繰りが行き詰まる方向に追い込んでいくそうなので、一度填ると抜け出せないのだとか・・・悪徳金融業者って再び活気づいているのですね。

99.02.17

補足3
 本文中の「証券パクリ」に誤認があったので補足訂正します。証券パクリは、証券会社から証券をだまし取ることではなく(現実にだまし取れれば、そうなんですが)、いわゆる証券金融という業態のうち悪質な業者を指すそうです。企業などが売るに売れない持合株式などを持ち込んで、60〜80%の掛け目で金を業者から借りることがあります。期日までに元利金を返済すれば株券が返還されるシステムですが、悪質な業者は右から左へ売却してしまうそうです。この場合、20〜40%がそのまま業者の利益に成ってしまいます。はっきり言えば売却により債権回収の懸念が無く、株価下落の懸念もありません。あるのは、株価の急騰だけですが・・・非常に悪質だと株券の返却に応じない(市場で買い戻さない)そうです。つまりパクリに成るわけです。
 加えて、シテ集団が資金調達のために、顔見知りの証券金融から80〜90%の掛け目で融資を受けることがあるそうです。この場合、シテ集団が敗れると資金回収ができないというリスクもあり、業者が早々と売り抜けることもあるそうです。そんなことをされると自分の資金で自分の株式を2度買いすることになりますが・・・要するに業者に足下を見透かされるとダメということですね。
 いずれも正確にはパクリではないことが多いのですが、悪質な業者にはご用心ということで。また大株主名義の株券は安易に使わない方が賢明です。そういう株券が市場に出回っているという噂だけで、せっかくの信頼関係が崩れます。危ない橋を渡るよりも、さっさと売却して身軽になりましょう。

99.11.06
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