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政治の研究No.13
個人情報1件で何円ですか

 カテゴリーは経済なんでしょうかね。でもプライバシー保護は政治問題ですから・・・ここで述べましょう。

 最近は顧客の個人データ流出が問題化しています。さくら銀行の顧客データを出入り業者が名簿業者に売却し、名簿業者がさくら銀行を恐喝した事件(さくら銀行事件)、人材派遣のテンプスタッフの登録者データ9万人分がインターネットで公開され物議も醸した事件(テンプスタッフ事件)、高島屋カードの顧客情報50万件が売却された事件(高島屋カード事件)、兵庫県警生田署の捜査資料が廃棄した机から持ち出され、何故か生田署に送り返された事件(生田署事件)が、いずれも1998年1月に相次いで発覚しました。さらに3月、世田谷区内の私立女子高の生徒90人分の個人調査票データを拾得し500万円を要求した事件(女子高調査票事件)が発生しました。今年は流行なんでしょうかね。
 ところでこの個人データは幾らで売買されるのでしょうか。高島屋カード事件では50万円で売却されたので1件1円の計算です。女子高調査票事件では未遂でしたが1件500万円です。そしてテンプスタッフ事件では腹いせであるが無料公開でありました。モノの本では1件2円〜4円が相場らしいです。しかし大学などの名簿はほとんど価値が無くなっていると聞いています。やはり年収や家族構成ぐらいは必要なのでしょう。
 東京・新橋には名簿図書館とかいうデータベースサービスがあります。会員制だが民間人も入場料を払うと見学できます。民間人はコピーの利用ができませんが、ポン太も学生時代に一度見学しました。ここの経営者がさくら銀行事件で恐喝罪に問われましたが、これまでも恐喝で稼いでいたのかも知れません。外聞をはばかる銀行が犯罪を隠蔽せずに届け出たのは、総会屋問題に懲りた成果なのか、交渉相手が小者だったのかよく分からないのです。しかし小遣い稼ぎに名簿を売りに行く、愚か者は相変わらずいるそうです。

 ところが最近は情報の電子化が進んだことから、傾向が大きく変わりつつあります。まず大量のデータが簡単に持ち出せるようになりました。高島屋カード事件も紙ファイルデータなら1万件持ち出せたかどうか疑問があります。さくら銀行事件も同じでしょう。次にデータの加工が容易になりました。大量のデータから必要なデータを抽出し、並べ替えや条件検索を行うことが簡単になりました。さらに、複数の電子データを照合してデータの確度を上げることや、並列条件を増やすことが可能です。
#N頃から狙われたのは、ガードが堅いはずの消費者金融機関でした。まず1995年5月にプロミスから20万件の顧客データが流出しました。翌1996年8月にはその元締め全国信用情報センター連合会から1万件、さらに1997年2月にはシー・アイ・シーから1,000件が流出しました。中には消費者金融業者を装い、せっせと個人情報を引き出すダミー会社が十社以上有ることも発覚しました。この業界ほど個人情報を握るのは、役所を除けば他に類を見ません。

 またNTTが1998年2月に始めたナンバーディスプレイサービス(NDS)は、企業データベースと連動させれば電話を受けると同時に顧客情報が端末に表示できます。通販などでのメリットばかりが強調されますが、簡単な個人認証にも使えますし、電話リクエストなどでデータ蓄積や分析に利用できます。企業側にメリットは大きく、個人側のメリットはほとんどないのが実状です。また「184」を入力すれば非通知通話が可能ですが、ご親切なことに番号非通知であれば掛け直しを命じるサービスが付いていて企業側に有利になっています。本来解決するはずのイタズラ電話には全くの無力でもあります。さらに言いますと、全加入電話の90%がNDSに自動移行していることは問題です。デフォルトをNDS利用としたのはNTTの謀略であり、今後は電話番号を使った様々なサービスが横行するでしょう。そして電話番号をキーとして個人情報の集約化が進むのは確実です。

 最近高値で売れている名簿は、サムライ商法とかネガティブ商法とか呼ばれる違法スレスレの通信販売の顧客名簿だそうです。これはカモ客ばかりの名簿なので1件数千円だったりするそうです。カード会社などは顧客囲い込みのため、ジャンルを絞った情報提供を始めています。一見便利なサービスのようですが、カード会社側は無駄な案内を省くことができるとともに、カード利用情報を併用して個人の嗜好を分析することができます。こういう情報も通販業者に高値で売れるに違いありません。例えば流通系のカード会社は、親会社に個人情報をフィードバックするでしょう、系列の通販業者からダイレクトメールの嵐がやってくるかも知れません。

 不可解なことに、名簿の売買を禁止する法律はないそうです。冒頭の事件はいずれも横領罪か詐欺罪が成立していますが、企業間での取引や名簿の正規所有者が売買することは禁止されていません。せめて名簿の不正流出の手段は検討して欲しいです。企業の情報管理を徹底させ、これを怠る場合の罰則規定も明確に盛り込んだ法案作りを検討して戴けないでしょうか?

98.03.28
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