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経済の研究No.106 |
銀行手数料を下げましょう |
銀行には、いろいろな名目の手数料があります。サービスを利用する以上、それに見合う代価を徴収するのは良いのですが、意外なサービスが無料であったりする割には、存外に割高に感じるサービスもあったりするのです。手数料はそもそも自由に設定できるもの、その手数料が現状に見合っているか、競争力を維持しているものか、を常に見直して欲しいと思います。銀行は本来融資によって利益を稼ぎ出すべきで、その他のサービスは実費徴収に留めるべきでは無いでしょうか。銀行の手数料で一般的なものは、振込手数料と時間外手数料でしょうか。
振込手数料は、現在のところ窓口振込とATM振込、テレホンバンキング振込でそれぞれ違っています。また三万円を越える振込では印紙税相当額が加算されています。手数料は自由化されたものの、一部で消費税程度の格差を付けたほかは一律横並びの手数料設定です。これはどう考えても不自然です。
ATM振込を導入した最大の理由は、省人化・省力化です。あまりにも多い窓口業務を分担させるためにATMは導入されました。積極的に情報機器に投資を行い省力化に務めた銀行と、古いシステムをそのまま使ってきた銀行とが同じ手数料を取るのは不公平です。利便性の向上を図った銀行はそれなりの手数料を受け取り、そうでない銀行は安さで訴求するべきなのです。しかし長い間、横並びは崩れませんでした。
3月13日、住友銀行は振込手数料の大幅変更を発表しました。目玉は窓口振込の手数料を最大420円引き上げること、ATM・テレホンバンキング振込の手数料をもう一段階引き下げること、です。これまで窓口扱いでも同一支店間の振込は無料でした。しかし人件費が掛かる条件は同じなので有料にし、これまで当日夜間のバッチ処理故に割り引いてきたATM文書扱いは廃止になります。住友銀行は三和銀行と並んでインフラ整備に熱心だった銀行ですから、大胆な手数料変更に踏み込めるようです。まだまだ割高ですが、風穴を空けたと言うことで評価しましょう。
しかしシティバンクは、一定金額を預け入れておけば、海外送金まで含めて振込手数料は無料です。実際の問題から言えば、支店間オンラインが整備された現状で顧客取引だけ高額の手数料を要求する日本的スタイルにこそ問題が有ると言えましょう。
つぎに時間外手数料です。通常平日の18時以降、土曜日の15時以降に徴収される時間外手数料は高いですね。それ以前と以降との間に格別のコスト差異があるとは思えないのですが、時間外には105円もの手数料を徴収しています。どれだけ高いかと言えば、年利0.12%で10万円を預けた場合の1年分金利は96円(国税+地方税20%を控除した金額)よりも高いのです。自分の金なのですから、1年に一度でも時間外引出をするのなら10万円をタンス預金をした方が有利です。しかも他行で引き出すと手数料は一挙に210円・・・ばか高いのがお分かり頂けるでしょう。そもそも他行手数料は取るべきものではありません。一方が他方に対して圧倒的に利用されるのでない限り、相互に相殺して吸収するべき手数料のはずです。お互いに談合して徴収しているに過ぎません。
これに風穴を空けたのが、やはりシティバンクです。ATMは24時間稼働、しかも所定の要件を満たしていれば手数料無料です。第二地銀の東京相和銀行も話題性を狙って24時間稼働、手数料無料を実施しています。実際の話として、都銀が24時間ATMを稼働させるのも、三和銀行が試験的に始めたばかりです。そこまでサービスを提供することなく手数料だけ高いのは納得できません。銀行は時間外の利用が少ないからと言い訳をしていますが、時間外手数料が無くなれば夜間等の利用が増えるはずです。
余談ですが、時間外手数料を支払うぐらいなら、銀行系カードの5DAYSキャッシングをお奨めします。このサービスなら5営業日1万円借りても手数料は50円です(決済銀行で自動引き落とし)。返済機能付きATMが近くに在れば、セゾンカードやVIEWカード(JR東日本系)、消費者金融系カードでキャッシングされることを勧めます。これらは金額が纏まっていても翌日返済なら格安です。近頃短期なら金利無しというサービスも始まっています。金融が専門の銀行に限って手数料が下げられないなど考えられません。
手数料で利益を稼ごうという発想に問題があります。本業で黒字を出し、その原資を提供してくれる預金者には極力無償サービスで応えるべきです。預金者のお陰で利益を上げさせて貰っているという基本を忘れてはいけません。預金者の代わりに運用してやっている、預かってやっている、そういう思い上がりを捨てないことには、いつまでも銀行は体質を変えられないでしょう。殿様商売の時代は終わりました。顧客第一の発想を持たなくては外資に蹂躙される日も遠くありません。
99.05.02
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補足1
シティバンクが手数料無しで提供しているサービスは、24時間預入・引出、電話・インターネットでの海外送金、提携都銀・地銀での引出(これは凄い!)、9通貨のトラベラーズチェック発行、取引明細書の毎月送付です。月間平均預かり残高が100万円以上であることが前提ですが、これは当然要求して良いことです。
99.05.02
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補足2
あさひ銀行が11月から新ポイントサービスを始めるそうです。銀行との扱い取引が増えるほど優遇されるのは先行する他銀と同様ですが、提携ATMを利用した場合、月3回までの手数料を払い戻すというメリットを打ち出すのだそうです。特定顧客を対象にした囲い込みサービスですが、手数料に着手するのは良い傾向です。あさひと提携を打ち出している東海銀行や大和銀行に拡がってくれることを期待したいです。
99.09.08
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補足3
巣鴨信用金庫が、高齢者を対象に現金の宅配を無料で行うと発表しました。都銀や地銀も現金宅配は行っていますが、いずれも有料です。今回は信用金庫の小回りの良さを活かすとともに年金受給者の囲い込みを行うのが狙いのようです。
あわせて年金口座の資金を他行ATMから引き出した場合の他行手数料の割り戻しも行うそうです。年間6回分を払い戻すとしており、積極的に年金受給者の資金を受け入れる方向で動いています。同信金は支店ネットワークが密であり、安定した資金量を確保していることが強みであります。
99.09.10
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補足4
信用金庫業界は、ATMの相互利用手数料を無料にする検討を始めたそうです。全国どの信用金庫でも手数料無料で引き出せることで、信用金庫の利便性を向上させるとのことです。民間では最大規模になる19,000台のネットワークが構築されます。これまでも複数信用金庫規模での無料化提携は実現しており、1992年の長野県全域、1999年の東北6県と北関東・甲信越5県の提携などが、さらに発展する模様です。
都銀では合併予定のさくら銀と住友銀、東海銀とあさひ銀などで相互手数料の無料化が進んでいますが、系列外への拡大は未だなく、コンビにATMの普及なども絡んで手数料引き下げは必要急務と見られています。事務手数料や機械運用費の問題など解決すべき課題は多いですが、経営努力で埋め合わせて欲しいと考えています。
00.05.20
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補足5
労働金庫では、2000年10月から他行・郵貯ATMからの預金引き出しを事実上無料とするサービスを始めました。対象はMICS(全国キャッシュサービス)加盟の全金融機関と郵貯で、手数料は支払うものの、翌月に全額返金(キャッシュバック)される仕組みです。都市銀行で優良顧客を対象にした手数料免除や、回数限定のキャッシュバックはありましたが、全顧客を対象に導入するのは珍しいです。
またインターネットバンキングで先行するさくら銀行系の「ジャパンネットバンク」は、手数料の安さと預金金利の高さ(といっても知れていますが・・で優れています。近頃はインターネットオークションが盛んですが、決済の多様化が求められると同時に決済コストの低減が求められています。決済コストは、送料コストも大きいですが、振込手数料もバカに成りません。こうした不特定多数の手数料への不満が、大きく手数料を下げる要因となってくるのは間違いないでしょう。
01.01.07
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補足6
ようやく開業にこぎ着けたIYバンクは、野村証券など他業種との提携のほか、都市銀行との提携も強めています。三和銀行は、IYバンクの要請に基づき、平日と土曜日の他行手数料を52円にすることを発表しました。また11月末までは、他行手数料を無料に、他の営業時間の手数料も105円とするそうです。三和銀行としては、持ち出しになる水準ですが、自行ATMの補完としては割安で、積極性を打ち出した模様です。
また三和銀行は、郵貯ATMとの相互開放を実施し、珍しいことに郵貯ATMを使って三和銀行の口座への入金ができるようにしました。かなり革新的です。対するIYバンクは、提携銀行に手数料引き下げを要請する一方で、手数料無料時間を広めに取りました。とくに休日7〜19時が手数料無料というのは、インパクトがあります。
01.06.03
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