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経済の研究No.02
株価低迷の原因は外国投資家

 大幅な大暴落で始まった1997年の東京株式市場。政府の無為無策が響いて、バブル以来の最安値に迫ったまま大納会を迎えました。日経平均株価指数は15,000円台を付けましたが、これはマヤカシで、現実には9,000円台であるといわれています。1996年には100円台の銘柄は徳陽シティ銀一銘柄であったのが、大納会の時点では、100円以下が数十銘柄、200円以下が二百数十銘柄に及びました。一方でソニー、ホンダなど10,000円近い株価の銘柄も目立ちました(これを二極分化と呼んでいます)。

#N後半から始まった株価低迷は、外国投資家の著しい市場参入にありました。とくに大型金融機関(とくに生保)から大量の株を借り受けて「空売り」を仕掛けました。空売りが自己の資産総額を目減りさせることは明らかでしたが、保有株の中には安定株主を期待された「義理株」が多く、いかに含み益が多くても売却できない理由がありました。しかも金利自由化による預金・国債の利回りは低迷しており、顧客に約束した利回りを得ることができません。やむを得ず、外国投資家に一時的に義理株を貸して、わずかな金利を稼ぎました。彼らが大規模な売りを仕掛けることで株価が半値に成ることも気が付かなかったのです。貸した義理株は必ず決算日までに返却されたので、見掛け上は金利だけ利益が増えましたが、生保の場合は金融資産の含み損が所定率を上回ると簿価を洗い直す必要が生じるため、結局赤字を計上せざるを得ませんでした。その赤字は表面に出せないので、わずかな含み益を持つ優良企業株の売却に及びました。つまり売却が出来ない義理株と含み損のある不良銘柄が残ったわけです。
 また、大手証券各社が総会屋問題に振り回されたことも悪影響を及ぼしました。最悪の時期に業務停止を受けることになり、山一証券はパンクしました。情報分析能力と諜報能力に長けた外国投資家が検察に情報をリークしたのかも知れません。いずれにせよ、その間隙をついた外国投資家の跳梁跋扈を許してしまいました。1997年前半には、実体のない日経平均株価指数を振り回され、株式市場は大混乱を来しました。本来は日経平均株価指数は東証一部上場の主要225銘柄の株価の単純平均株価にリンク(所定倍率を掛けて調整されている)しています。これまでは比較的妥当な水準を示してきました。ところが単純平均であるところに目をつけて、株価を上下させやすい銘柄に集中的に売り買いを入れることでこの指数を変動させたのです。
 指数が低下すると、他の銘柄は指数に連動した水準までコンピュータが売り操作をしてしまいます(信託、證券では主要銘柄にコンピュータ売買を導入しています。米国での株価大暴落もコンピュータ売りが引き金になりました)。翌日に指数が大幅に回復すれば、同じ銘柄を買い戻す操作をします。ただし、わずかなタイムラグのために、安値で売って高値で買ってしまいます。その差損は外国投資家の差益となった訳です。しかも日本の機関投資家も便乗しましたから、指数の変動幅が数100Pと巨大になりました。

 では、どのようにして指数を操ったのでしょうか。それは指数の計算式の欠陥を利用した手法でした。一応は単純平均であるので、10,000円の株が11,000円を付ければ1,000円のアップです。反対に100円の株が半値の50円になっても、50円のダウンです。日経平均株価指数は、東証1部上場の225銘柄による一応単純平均ですから、指数を下げるには、100円の株を90円にするよりも、10,000円の株を9,000円にする方が影響力が大きいことになります。また日経平均株価指数を導入して以降、株式分割や無償増資(例えば十割の株式分割(1株が2株になる)や十割の無償増資(1株について1株をタダで貰える))があれば理論上は株価が半値になります。そうなれば実体は変わらないのに指数だけ下がってしまいます。このため、今後はその銘柄の株価は所定倍率(二倍)を掛けて計算することにし、指数変動を調整したのです。銘柄によっては二十倍近いものがあり(1株額面を5円から50円に変更した銘柄など)、この銘柄は100円下がれば2,000円下げたことに相当します。

 外国投資家はこれに目を付けました。とくに品薄株と呼ばれ、安定株主が多く市場流通量の少ない株式銘柄を集中的に売買すれば、わずかな金額で指数を大きく変動させることが可能です。まず、高い水準で指数の先物売りを行い、徐に品薄株の売りを仕掛けます。大量の売り株を買い支える投資家はなく、むしろ便乗売りが増えます。品薄株が大きく下がれば指数も大きく下げますから、その時点で先物売りを手仕舞いして大きな利益を得ます。同時に先物買いを入れて、徐に品薄株の大量買いを始めます。ある程度戻れば他の投資家の買い戻しも加わって指数が大幅に回復します。そこで先物買いを手仕舞って利益を得る...ということが可能です。これが6月頃まで繰り返されて日本の資金が外国人投資家に吸い上げられました。数兆円規模での資金流出だったと言います。
 なぜ品薄株が存在するのでしょうか。日経平均は、アメリカのダウ工業平均指数と違い、あらゆる業種の銘柄が一様に加わっています。もちろん電機、建設、銀行などの銘柄数が大きく配分されていますが、例えば窯業では品川白煉瓦、食品ではホーネン、メルシャンなど、品薄株が代表銘柄に選ばれています。そもそもこんな企業とトヨタ、ソニーの株価を同列で論じようとするところに問題があるのですが、225銘柄の一つに加わっているから始末が悪いのです。品川白煉瓦の調整指数は約18、ソニーの指数は約4。6月時点の株価に指数を掛けた値は、品川白煉瓦が18,000P、ソニーが36,000P。品薄の白煉瓦が大きく変動した方が指数を動かし易いことは明らかですから、外国投資家は白煉瓦を揺すぶったのです。ちなみに現在の白煉瓦は見捨てられて200円台である。

#N7月頃になって、品薄株を利用した指数操作が公知となりました。経済誌が詳細な解説をおこなったことが理由にあります。そこで外国人投資家は新たな戦術に切り替えました。一つは格付け機関の悪用、他の一つは経営不安企業に対する誇大な噂と一気呵成な売り浴びせです。このテーマは次回以降に譲ります。
 いずれにせよ、百戦錬磨の外国投資家には日本投資家は対決できません。とくに不況一色に染まった現状では個人資産の海外流出もやむを得ない状況です。ただ、これ以上外国投資家の跳梁跋扈を許せば、海外進出企業は海外からの撤退を強いられ、経営不振企業は軒並み潰され、日本国中に失業者があふれるでしょう。株式・債券の価値が紙切れになることは、日本の価値を紙切れにすることです。その結果は税収の低下を招き、日本政府を破産へと導きかねません。もちろん国債の償還もされません。現段階でも遅すぎる観はありますが、抜本的な経済対策を打ち出さねばなりません。

98.01.03

補足1
 読者の方から、日経平均株価は日経単純平均に22.502の修正倍率を掛ける(あるいは9.999の除数で除する)のではないかとご指摘がありました。たしかに証券Q&Aにもそうあるのですが、それが事実であれば株価の安い品薄銘柄で日経平均を振り回す原理が説明できません。証券会社の課長さんも売買株式数の加重平均か何かもっと複雑な計算しているはずだと言います。原理的には上記コラムも正しいのですが、実態は少し違うかも知れません。

補足2
 日本の225銘柄は固定ですが、審査によって適宜銘柄の入れ替えがあります。これに対してNY市場のダウ工業平均は、工業関連銘柄で高値上位30銘柄を抽出してその平均を取った指数であり、わずか30社の好調な会社があれば指数は上がり続ける計算になります。ただし銘柄の入れ替わりは非常に激しく、不動の地位を守っているのは時価総額が3,000億ドルを超えたGEだけだそうです。

補足3
 補足1の疑問が解けました。やはり修正倍率を単純に掛ける方法が正しいのです。ただし、品薄株で日経平均を振り回すというの本当で、そこはコンピュータ売買の盲点であったということです。
 普通は指数先物を売って現物株を買うということをするそうですが、この場合指数の225銘柄を単位株ずつ購入するため、品薄株も少ない中で買われることになり急騰します。逆に指数先物を買って現物株を売るということもするそうですが、この場合は品薄株の値下がりが大きくなります。
 ここに着目した外資は、品薄株だけを売買していたと言うことです。単純な売買だけでも株価が大ブレしますから、機関投資家のコンピュータは指数先物の取引だと判断して、連れ買いや連れ売りをします。品薄株の値動きが激しいほど指数の振れも大きくなり、その振れが現物市場の大ブレに波及したということです。つまりコンピュータを騙して市場を振り回し、1人外資が稼いでいたという構図だそうです。
 最近では、品薄株のトリックも見破られて、また現物株の復調で、品薄株に操られるということは無くなったようですが、日本の投資家はすっかり騙されて巨額の資金を巻き上げられてしまいましたね。

99.11.12

補足4
 ひと頃は市場を振り回した品薄株ですが、やっと是正されることに成りました。日本経済新聞社は4月15日に日経平均225銘柄のうち30銘柄を入れ替えることを発表しました。IT企業や堅調金融を中心に採用して、紡績や鉱業・化学・金属などを除外しました。
 日本経済新聞社による銘柄の入れ換えはほぼ9年ぶり。銘柄入れ換え実施が4月24日からと急であったため、市場は大混乱に陥りました。除外銘柄が売られ採用銘柄が買われましたが、指数的には採用銘柄の買いがカウントされなかったので、指数の急落を招きました。もう少し周知期間を設けるなど配慮があるべきでしたが、罪なことをしました。

採用銘柄
 JT,花王,第一製薬,エーザイ,テルモ,TDK,ミツミ電機,松下通信工業,アドバンテスト,カシオ計算機,ファナック,京セラ,太陽誘電,松下電工,三菱自動車,富士重工業,東京エレクトロン,セブン=イレブン,イトーヨーカ堂,ジャスコ,興銀,大和銀,東海銀,静岡銀,住友信託銀,安田信託銀,住友海上火災保険,JR東日本,DDI,NTTドコモ

除外銘柄
 ニチロ,三井鉱山,住友石炭,ホーネン,富士紡績,東邦レーヨン,ラサ工業,日本カーバイド,日本化学工業,日本合成化学工業,旭電化工業,日本油脂,東洋ゴム工業,日本カーボン,ノリタケ,品川白煉瓦,日本金属工業,日本冶金工業,日本電工,三菱製鋼,志村化工,昭和電線電纜,東京製綱,日本ピストンリング,西華産業,岩谷産業,丸善,山九,三井倉庫

00.05.05
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