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政治の研究No.127
機密費という名の機密

 外務省大臣官房の要人外国訪問支援室長が、内閣官房機密費を私的に流用していた問題が、燻っています。企業で言えば工作費にあたる機密費(内閣官房機密費は、その一部。官邸周りの機密活動に利用)は、外務省ばかりでなく多くの省庁が持っているようです。企業の工作費は、通常裏金を捻出して充てるわけですが、国の機密費は予算として割り当てられてるのが、驚きです。しかも領収書不要で、会計監査の対象にも成らないというのが、呆れます。

 世の中には、領収書の要らないカネが必要になる機会が多々あるでしょう。奇麗事では回らないこともありますから、幾ばくかの怪しいカネも必要でしょう。しかし、問題となった内閣官房機密費は、余りにも巨額で、その使途はピント外れです。在外大使館員の飲食費・遊興費に消え、あるいは高級官僚や政治家の接待費や餞別代に消え、さらに管理者である室長の懐に消えていたのですから。
 問題の室長の流用した金額は、まだ確定していません。彼が在任中に受け取った機密費は、総額10億円だそうです。彼がポケットに入れたのは一部に過ぎないようですが、領収書不要という性格のため、解明が難しいと報道されています。ポケットに入れた金は、司直の手による解明に期待しますが、問題は「正しく使われた機密費」の方です。
 外務省の幹部が、機密費の流用と知りつつ飲食費などに充てていたようです。同じ人物に長期間機密費を預けた張本人達なので当然ですが、出張や遊興の面倒まで見てくれる人物を重宝したのは、間違いありません。結果的に、十分なチェック能力が機能せず、ぬるま湯的でドンブリ勘定の機密費管理に成っていたと思われます。在外大使館では、積極的な機密費消化が求められていたともあります。

 平成13年度の予算が、間もなく成立します。各省庁では、機密費の大幅削減を行う予算修正を行ったそうです。金額ベースで最大の外務省も、半減であるようです。半分でも大きすぎるような気がしますが、いかがなものでしょうか。いっそゼロ予算にしてみて、本当に必要になる場面があるのか検証してみてはどうでしょうか? 領収書の要らない、国民に言えない支出がそんなに多く必要だと思えないのですが。
 とくに今回の問題は、外務省キャリアのエリート意識によるとの意見もあります。日頃から、特権意識に凝り固まっている彼らが、機密費の流用を当然の権利と見ていたのは間違いないでしょう。国際的に見て、外交音痴と揶揄される彼らの体質改善を図らない限り、同様の事件は何度でも繰り返されるでしょう。

 KSD事件を引き金にして、特殊法人や公益法人による目的外支出の実態が暴かれ始めています。恐らく、こうした法人から目的外に引き出された資金の相当額が、予算外の機密費としてプールされているでしょう。監督省庁から別名目で支払われた資金が元手なので、本来の機密費以上に国税の掠め取りである蓋然性が高いです。確か3月一杯を目処に見直しが進んでいたはずですが、首相の進退問題でウヤムヤにされつつあります。
 せっかく始まった、行政改革です。省庁再編で万全なんてことを、国民は信じていません。外圧に耐えかねて動くのでなく、自発的に体質改善に取り組んで欲しいと思います。

01.03.17

補足1
 元室長の在任期間は、68カ月もの長期間であったそうです。1993年以降、機密費の支払いに私用クレジットカードが利用され、その振込先に機密費から入金があるようになったようです。1996年以降はゴルフ会員権や競走馬を買い漁り、資産形成に動いていたようです。高級マンションを購入するなど派手な動きを、遺産絡みと説明していたそうですが、それを鵜呑みしていた幹部の動きは不可解です。企業であれば、すぎさま機密費の流れを洗うなどするはずですが、放任でした。
 ゴルフや麻雀は常に驕りで、それをポケットマネーで埋めていたらしいと呑気なコメントをしている幹部が多いようですが、やはり薄々は知っていたというのが本当でしょう。また局長級で600万円、課長級で50万円しかない正規の機密費を、度々元室長が肩代わりしていたとも言います。荒い使い方をすれば無くなって当然の機密費を、さらに私費で補填するはずが無いのは自明の理のはずですが・・。

01.03.31

補足2
 そもそも領収書の要らない金というのが、怪しいです。多くの支出の場合は、十分に領収書を受け取ることができるはずです。会計検査院にしても、機密費をチェックしないのでなく、チェックできないのが実情だとか。正当な支出と言い張られると、その中身を質問することもできないそうです。要するに所定期間非公開とすれば良いだけで、時期がくれば領収書共々国民に公開するのが本筋でしょうね。

 話は少し違いますが、機密費の煽りを受けて、地方議員に配分されている政務調査費の運用が厳しくなるそうです。都道府県や政令指定都市の議会では必ずある調査費ですが、領収書の提出を義務づけているのは7%で、多くは収支報告書で代用しているそうです。何となく議員手当に化けているとか・・。同じことは、国会議員の歳費にも言えそうですので、次の矛先は政治家に向きそうです。それとも、矛を片づけて知らないふりでしょうか?

01.05.20

補足3
 外務省の外国機密費は、2002年度予算原案で4割減となりました。しかし、金額ベースでは33.4億円もあり、かつ4割減の大部分は他の費目へ付け替えられただけで、実質的な削減は小幅であるとのことです。内訳では、本省分が11.5億円、在外公館分が21.9億円。デンバー総領事による公金流用事件などで臆測を呼んだ在外公館分は、抜き打ち検査の強化で透明性を高めるという半端な整理に落としました。
 また内閣官房機密費は14.6億円で1割カットに留まりました。首相外遊時の一部費用を外務省に一元化するなどし、実体は微増のようです。
 さらに国会で取り上げられた特定郵便局長に支給される「渡切費」は、局長会の選挙不正などもあって全額ゼロ査定となった模様です。

01.12.31

補足4
 機密費問題ではないですが、同じ外務省の裏金問題の補足です。外務省職員がホテル代やハイヤー代を水増し請求して捻出していた裏金は、総額で4億6千万円になったと会計検査院が報告しました。裏金の大部分は、職員関係の飲食費や宿泊代に消え、残額は5千万円程度であったそうです。
 1年前の外務省の内部調査では2億円であったので、内部調査は生ぬるかったことになります。川口外相は、今回の会計検査院の報告を受けて、幹部の再処分を発表しました。予想以上に根が深い結果になりました。

02.11.30
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