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政治の研究No.101
関西空港・第三滑走路

 当HPのコンセプトの一つである神戸空港が、9月中旬に着工されました。それが更新意欲減退の一理由でもあったわけですが、少し前向きに考えることにしますね。

 神戸空港が着工するための最後の難関は、環境庁から「埋立OKのお墨付き」(正しくは、公有水面埋立の免許)を貰うことでした。これは関西国際空港の第二滑走路も同様でしたが、環境庁は大阪湾一帯の水質悪化や生態系破壊に懸念があるとしながらも、ゴーサインを出しました。関西空港の第二滑走路は必要なものでしょうが、それに便乗して神戸空港にも認められたのは残念ですね。だって二つも大規模な埋立をすると・・・海は二倍に汚れるのですよ。

 着工はしたものの、依然としていくつかの課題を抱えています。一つは、景気回復の動きが遅いために、大幅な税収不足が続いていることです。すでに発行しすぎた市債が重みになり、空港完成を前にして、財政再建団体に成ってしまう可能性が高いです。一応は継続事業優先でしょうが、その分だけ多くの市民サービスにしわ寄せを生じる危険がありますし、これまでのような偏りある開発行政が打ち止めになってしまいます。そこまでしても、空港が欲しいというのでしょうか。
 二つは、土砂の問題です。これまでの埋立土砂は、北区などの開発予定地の山を削って運んでいました。しかし相次ぐ埋立事業によって、いよいよ自前の土砂では足りないそうです。一方で、関西空港と同時に埋立を始めるため、外部から買い付けるにしても、費用計算が大きく狂う危険があります。空港関連事業費がさらに膨らむ危険があるのです。関西空港では無許可の韓国土砂を運んできた業者があったりしたそうで、正規ルートでは手頃な土砂が入手できないかも知れないというのです。そんじゃあ、中途半端な埋立公園にでもしますか・・・。
 三つは、提携してくれる地方空港が無くなるかも知れないことです。340万人を見込んでいる利用客も、どう試算したのか分かりませんが・・・全国各地の地方空港から飛んでくるであろう地方路線を当てにした数字です。ところが各地の地方空港で路線削減の動きが出ており、採算性の疑わしい神戸路線を飛んでくれる飛行機が無くなるかも知れないのです。外郭団体に航空会社でも作りますか?

 実のところ、路線開設が進んでいないことが一番の問題です。先立って、近隣の播磨空港計画が需要予測を大幅に下方修正し、下手をすると計画そのものが頓挫しそうだと発表されています。当初は2008年に毎日24便・年間27万人を見込んでいましたが、2010年に毎日12〜18便・年間10〜19万人に修正したのです。これはもう採算割れベースです。
 下方修正の原因は、青森・花巻など遠方路線からの来客がそもそも見込めないことや、徳島・大分など他の交通機関の方が圧倒的に有利になる区間でも利用客を弾いていた失敗でした。実はまだ松山・福岡・長崎など近在にも望みを繋ぐほか、山形や鹿児島など経済上の繋がりが全くない地域の需要を依然として計上しており、まだまだ大甘な計算で、もうお手上げ状態だと言えましょう。
 神戸市はどこと提携するつもりなのか発表していませんが、他の地方空港が散々な状況にある以上・・・厳しいでしょう。また、羽田・札幌・福岡など国内の基幹空港は採算の合わない路線を閉め出す方向にある上、羽田は中小型機の受入を認めていないそうなので、伊丹や羽田と競合するドル箱路線は引かせて貰えそうにありません。どこから360万人もの人間を弾きだしたのでしょう。

 一つの望みは、基幹空港の過密状態を解消するための受け皿空港になることですが、これも画餅だと言われています。大阪へ出張する人間が、わざわざ神戸空港→三ノ宮→大阪の経路を使ってくれるとは思えません(直通バスは高速道路の渋滞が心配です)。利用客は、飛行機の羽田→大阪がダメなら、新幹線の東京(将来は品川)→新大阪を選択するでしょう。その方が安くて早いでしょうから。北陸・九州・四国方面からも神戸に用の無い人間が神戸空港を使ってくれるとは思えません。
 伊丹・関空に中小型機を飛ばしたい地方空港は沢山あると思います。しかし、いずれも路線ができたらビジネス客・観光客が増えるとの皮算用が働くからで、現実はそんなに甘いワケがありません。せいぜい新幹線利用客の一部を喰うだけです。また、基幹路線では早朝便や深夜便で大幅な割引がありますが、地方路線では望みようもありません。そうすると、仮に羽田=神戸路線が開設されても・・・一般客には使って貰えないでしょうね。

 ここまでは、多くの空港反対派が指摘していることでもあります。しかしながら、着工してしまった以上は違うことを考えないと、ダメですね。米軍に長期リースをする(米軍基地はんた〜い!)。ヘリコプターの中継ポートに特化し、エグゼクティブを狙い打ちする(この情報化社会で、ヘリコプターを乗り回す経営者は多いのだろうか・・・)。イベント併設型の空港にする(アクロバット体験講座とか・・・空中恐怖体験ツアーとか・・・ダメだ。1兆円の回収はできない)。

 では、関西空港に買って貰いましょう。あるいは、リースでも良いです。空港は神戸市が責任を持って作りますから、完成の暁には関西空港の第三滑走路ということにして下さい。関西空港は第二滑走路が完成したとしても、まだまだ全需要に応えることは難しいでしょう。アジア諸都市の空港に顧客を大幅に奪われていない限り、国際・国内ともに依然として発着枠の確保に苦しむはずです。そこで、関西空港の一部として使って貰えないでしょうか。
 幸いにも関西空港の第一滑走路と神戸空港改め「第三滑走路」とは、地理的にとても近いです。海底に直通列車を敷設すれば、おそらく20分前後で結べるはずです。第一滑走路のターミナルで搭乗手続を終えた乗客が、直通列車で第三滑走路へ向かい、飛行機に乗る。第三滑走路のターミナルで搭乗手続を終えた乗客が、直通列車で第一・第二滑走路に向かい、飛行機に乗る。今でも羽田空港内をバスで乗客輸送していますから、直通列車で結んでしまって一体の空港に見せかけることは簡単だと思います。
 関西空港としては、戦略的に第一・第二・第三の滑走路を使い分ければ済み、買い取るか借りるかしてしまえば、おかしな遠慮も無用です。滑走路が多様化して発着枠が増え、地方空港からの中小型機も受け入れることが可能になれば、羽田空港を抜いて日本最大の空港になることも夢ではありません。神戸空港では採算ベースに乗りませんから、関西空港で使って貰えないでしょうか・・・。

 またまた夢のような、調子のいいことを書いてしまいました。それでもまだ課題があるのです。それは機体整備です。現在のところ関西空港では満足な機体整備が行えていないそうです。その理由は潮風にあります。要するにデリケートな機体が錆びてしまうのです。そのため「多くは伊丹空港に移動してから整備を受けている」という情報を読者の方から頂戴しました(事実関係は調査中です)。整備の点で自立できていないのですね。
 本当であれば、神戸空港も同様の課題を抱えそうです。今でさえ儲かりもしない空港が、潮風の中で整備できる高密閉型の整備基地なんか作ったら、それこそ大赤字です。
 笹山市長・・・土建屋さんの利権のために、貴方は空港を作りたいのでしょう? それならば有利な条件で転売や賃貸しができる方策を考えた方が良いのでは無いでしょうか。そもそもそれが神戸商法ってものだと思いますよ。

99.10.17

補足1
 関西空港も赤字続きで青息吐息であるようです。日本では初めて、株式会社方式での空港事業となった関西空港は、減価償却費や支払利息の負担が重く、営業収益は1,164億円(1999年度)でも経常赤字が237億円(同)という状況で、開港5年目の単年度黒字化を達成できませんでした。アジア圏では関西空港よりも安く便利な大型国際空港が相次ぎ開港し、国際競争力は落ちる一方とのことです。
 何分民間企業という位置づけなので、国の支援も知れており、これ以上の資本投下も難しい状況にあります。現在、中部国際空港や首都圏第三空港の構想もありますが、いずれも見込みほどに収益が上がらないのは確実で、ここへ神戸空港という話もあるべきではないです。しかし、静岡も無謀な大規模空港に邁進しており、地方自治体の空港好きにも困りものです。

01.06.30
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