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政治の研究No.82
お役人 の 気質

 お役人的などと揶揄されることがあります。役人が高圧的で、横柄で、いい加減な対応をすることを概ね指しているようです。市役所などの窓口、公立施設の職員、あるいは公営・準公営企業の職員に向けられる批判が多かったように思います。

 市役所の窓口などは応対が丁寧になりました。口調も丁寧語を使っていますし、番号札を配って整然と処理してくれます。申請書の不備などについては、相変わらず目くじらを立てていますが、職務に忠実だと思えば理解もできます。書類の様式の簡略化・省力化も少し進んでいるでしょうか。
 公立施設はあまり改善していないかも知れません。口調は丁寧な方が以前から在りましたが、相変わらず横柄で高圧的な態度を示す職員もいらっしゃいます。日常施設内という閉ざされた空間に在って、格別非難されることが無いためかも知れません。
 公営企業は大きく様変わりしました。まず「お客様」という呼称を使い始めたことや、「いらっしゃいませ」「おまたせしました」などを自然に言えるまで特訓されたことが評価できます。民間と競合するような業種、例えば公営バスや公営鉄道(正しくは企業体でありませんが・・)では接客姿勢が良くなりました。しかし、今ひとつコスト意識やサービス意識は欠いているようです。
 準公営企業というのは定義が曖昧ですが、例えば旧三公社なども様変わりしました。中でも早くから地域分割を受け、厳しい民間競争に曝されたJR各社の変態は評価できます。コスト意識もサービス意識も格段に向上しています。ようやく分割されたNTTは、競争相手が小粒すぎるので、どれだけユーザー重視に路線転換できるのか見物です。JTは、外見上大きく変わったように見えませんが、依然として競争原理が働きにくいからでしょうか。
 変わったと言えば、郵便局ですね。一頃に比べると、サービスは丁寧に成りましたし、新商品の開発にも熱心です。窓口業務の局員の姿勢も民間金融機関より丁寧という声も聞こえるほどです。配達業務の局員も横柄さは形を潜め、親切さが取って代わっているようです。

 しかし抜けきらない気質も見受けられます。細かいルールを決めたがることや、例外を認めたがらないこと、そして形式美に拘るような気質です。
 通常なら書類に不備があれば訂正印を押させます。どんな些細な誤記の訂正でも押すように言われます。民間の申請書類なら捨印(これも形式ですが・・)で済むようなものを何カ所も訂正印を押させます。主たる申請書の場合は、訂正を認めず全部書き直しを命じてくることもあります。ところが書き直しは、担当者が勝手に決めたルールであったりするので、申請者には困った話です。
 郵便局では、保管郵便物の受け取りに身分証明書の提示が義務づけられています。また身分証明書の番号を控えて本人の受け取りであったことを記録しています。さらに受取印の押印を求めてきます。職場近くのKビル内郵便局では、受取の際に受取印のほかにフルネームの署名を求めています。フルネームの署名は受取印の代わりに貰うもののはずですが、両方を求める上に、フルネームの署名だけでは郵便物を渡せないと言い張ります。
 先日、印鑑を持たないまま受取に行ったところが、郵便物の受渡を拒否されました。急ぎの郵便だったのですが、三文判を買ってきてでも受取印を持ってこい、拇印ではダメだなどと申します。結局は郵政省の相談所に電話を掛け、受取はフルネームだけでよいとの回答を貰った上で、後日に郵便物を受け取りました。局員が勝手に作ったルールに振り回されたわけです。
 通常の郵便配達では、本人の確認はしませんし、受取印に代えてフルネームの署名を求めるだけです。外勤職員は現実に沿った対応をしているのに、内勤職員は沿った対応をしていなかったのです。お役人気質だなぁ、と感じます。

 とはいえ、国民と接する部署の役人は、意識が大きく変わったように思います。変わっていないのは、日頃国民と接点を持たない部署の役人でしょうか。法人ばかり相手にしていると、相手が日頃から低姿勢のため、どうしてもお役人的な気質が抜けないようです。そのため、陳情や情報開示を求めて個人や市民団体が接点を求めてくると、同じように接してしまいます。行政手続法や情報公開法は整備されましたが、お役人的な気質が抜けきらない限り、まだまだトラブルのタネを撒きそうです。

99.07.17
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