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政治の研究No.19
ストップ☆減税!!

 昨年度は政府が粘り通して実現しなかった2兆円減税です。さんざん粘った挙げ句に、株式市場や不動産市場は大混乱をきたし、小売り消費も大幅な落ち込みとなりました。今年に入って減税を発表したものの、減税額は倍の4兆円に膨れ上がりました。昨年の減税要求時に2兆円減税を決めてあればここまでの経済低迷は無かっただろうと思います。ところがフタを明けてみると政局の混迷と消費市場の不調から、減税は全てローン返済と預貯金へ吸収されてしまいました。あるいは外債投資に向いて一層の円安拡大、金融収支悪化を招いたのであります。どうせなら減税をしないまま粘り抜けば、もっと経済は好転したかも知れません。
 昔は与党でさえも、減税を口にするには代替財源の提示が必要でした。ガソリン税や酒税、タバコ税の増税、税務負担不均衡の修正、消費税の導入・・・こうした代替財源があってこそ減税が可能でありました。ところが現状の減税は赤字国債の発行を前提としての減税です。我々若手労働者に将来の負担を負わせておいて、今はラクをしようという魂胆なのです。しかし、減税や公共投資の拡大が適度のインフレを誘導し、結果として国民の生活水準を引き上げたのは今は昔。むしろデフレへ向かいつつある現状で、将来の負債を拡大することは極めて危険です。赤字国債発行による経済へのカンフル剤注入は、国際政治から明らかに逆行しています。その証拠に、最近日本国債の格付け引き下げの噂が流れるなどの混乱を生じました。

 今は減税は見送り、すべて赤字国債の圧縮へ振り向けるべきなのです。そのための財政構造改革法であったはずです。恒久減税など冗談ではありません。加えて法人税の引き下げが再び議論されていますが、これも論外です。日本は直間比率が高く、法人の税金負担が大きいと企業経営者は主張しますが、その分護送船団方式という行政の厚い保護を受けてきました。一企業の支援にはドライな欧米とは明らかに違うのです。まして経費天国の我が国において、赤字企業が収める法人事業税が会社規模に関わらず10万円という馬鹿げた制度を見直すことなく、法人税の見直しなど以ての外です。単なる人気取りで法人税引き下げをされたのでは将来が危ないのです。税率の引き上げは非常に大変なのですから。
 所得税についても同じです。サラリーマンの所得税はガラス張りなのに、自営業者や農業従事者に対する課税は極めて甘いです。直接税の応分負担を調整することなく、一律減税など笑わせます。政治家さんはおバカが多いと言われる所以であります。農業従事者の場合、納税金額は少ないのに、手厚い補助金を受けています。彼らの預金である農林系金融機関は貸し手の応分負担も免除・軽減されてきました。農地の宅地転用でも農家内の話なら低課税という甘さがあります。株式会社による農地取得の禁止という不効率な零細経営の維持があります。零細であっても補助金で最低限の生活が保障されるから自己改革が進まないのです。農業従事者へのサラリーマン並の課税実施補助金の用途を農業の近代化と組織体系化の目的に限定しての自己改革促進を行うのが先決です。もちろん自営業者へも厳格な課税を適用し、あいまいな経費処理を解消させるべきです。中小企業経営者が補助金を貰って高級車を乗り回している、という話も聞きます。補助金の使途を明確にしましょう。
 税制負担の不公平感を解消せぬうちに、選挙での人気取りだけのための減税は断固阻止しましょう。現在の赤字国債の返済を義務付けられるのは若いサラリーマンだけなのですから。また手厚い農業保護行政が財政的に破綻するまでに農政改革を進めねば成りません。尻拭いのための赤字国債がジャンク債格付けに成る日は遠い未来の話ではないのです。

 見栄っ張りなODA、アメリカ経済を支えるだけの軍備増強、無駄の多い公共投資を削減しましょう。その削減額が年間2兆円を超えるのなら、その分の減税を認めましょう。せっかく銀行や建設会社の救済に公的資金を導入しているのに、彼らの海外投資のツケ清算に使われたり、外債投資資金に使われるのは納得ができません。国内問題を優先しないこれらの企業への公的資金援助も中止し赤字国債の返済に充てましょう。それがだめなら国民一人50万円ずつの臨時課税でも課して赤字国債を一掃しましょう。一度そうすれば政治家さんも無制限な赤字国債発行に走るまい、思います。

98.05.24
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