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経済の研究No.09
がんばれ東京電話

 東京通信ネットワーク(TTNet)は、1998年1月から市内通話でも市外通話でも格安の東京電話サービスを開始しました。市内通話は3分9円、隣接地域通話14円、市外通話は最大で72円という設定であり、現在NTTに加入していることを前提に、新規加入料、月々基本料は無料という破格のサービスであります。しかし加入者数はやや伸び悩んでいます。まず専用装置(アダプター)の取り付けが必要である面倒さと、NTTや第二電電などによる長距離通話料金引き下げが理由にあるようです。
 NTTは市外通話を最大90円までに引き下げ、これに大口割引(NTTカードやクレジットカード会社と契約)を併用すれば72円となり東京電話と同額になります。また隣接地域通話を市内料金と同料金とするエリア・プラスも投入し、割安感を強調する戦術に出ています。しかし遂に形振り構わぬ戦術に出ました。

 NTTは1998年2月から市内5分10円というタイム・プラスを打ち出しました。しかも関東エリアに限定してという我が儘勝手です。そもそも赤字の原因だと言い続けた03地域の市内通話です。これが急遽4割引という破格の値下げをしたのです。導入時期、対象エリア、価格設定のいずれを見ても東京電話を潰すことが目的なのは明らかです。市内通話網を独占しているNTTがお得意の戦略です。
 郵政省は当初難色を示し、特定地域だけの値下げは認められないと主張してきましたが、結局「郵政省ができるだけ早く全国に拡大するよう要請する」ことを前提に関東エリアでの試験導入を認められました。事実上押し切られた形ですが、背後に郵政族議員の暗躍があったことは言うまでもありません。NTTは「まず地域を限定し、割引制度が収支に与える影響を検証する」(読売新聞1月21日朝刊) 方針だそうで、東京電話がパンクすればサービスは取りやめるし、他地域の電力会社系電話が同様のサービスを開始すれば、その地域でも試験導入すると宣言したも同然です。
 そもそも従来から赤字だった事業において、四割もの値引きをして収支に悪影響が出ないはずはありません。我々は四割も安くなったから通話時間を二倍にするという非効率な使い方はしません。インターネット利用が促進されると言いますが、長時間の利用者はテレホーダイなどを活用していますので、大きな需要は見込めないはずです。こんな身勝手なNTT戦略を放置するべきではないでしょう。

 ともかく東京電話の頑張りに期待するしかありません。まず市内通話はあまり利用してはいけません。実際のところ3分9円のうち、6〜7円はNTTに支払われます。事務手数料などを引けば東京電話の利益は1円以下です。それよりも長距離通話をたくさん利用した方が東京電話の利益が増えます。また長距離電話各社も、NTTの暴挙を阻止するために、東京電話との競合でなく、協力を検討して上げましょう。

 最後にします。NTTは他社が新しいサービスを考えますと、そのお客をピンハネする戦略を採用してきています。これは日本を代表する企業として、あるまじき汚さです。そもそも高い電話加入料を返還せずに消却することまで考えています(これは後の回で紹介します)。相次ぐ他社との競合で値下げを繰り返していますが、その体力が衰えているという話も聞きません。NTTは、まだまだ絞れるはずなのです。自らの放漫経営を棚に上げて、国際競争力が身に付かないと嘆くことは愚かなことです。国際事業を展開したいのなら、まず大人の倫理観を身につけて欲しいものです。

98.02.15

補足1
 東京電話は長距離通話料金を72円から63円へ値下げして対決姿勢を強化するそうです。2月28日に新料金が認可されました。NTTは同日、番号案内サービスの値上げ申請が認可されました。1回目50円、2回目以降80円とし、その余力を市内通話サービス割引の原資に充当する考えのようです。

補足2
 東京電話はかなり苦戦が続いているようです。NTTが首都圏で提供中の市内通話割引サービス「タイムプラス」を1998年の11月にも全国展開するそうです。郵政省との約束に基づいてのことですが、5分10円のサービスで利益が出ているのか疑問があります。また従来は認めていなかった「タイムプラス」と大口割引併用を企業向け(事業者用回線)に限定して併用可能とするようです。企業が賢く使い分けているのを止めさせるのが狙いのようです。相変わらずズルいです。通信の巨人はもう少し公平な土俵でオリジナルなサービスをもって新電電と競争して欲しいものです。

補足3
 東京電話がプロバイダ事業を立ち上げるそうです。名称は「東京電話インターネット」で、月額固定1,750円、通話料3分8円であるそうです。メールアドレスが最大9つまで追加可能、ホームページも複数アカウントを保有可能というのを売り物にするみたいです。詳細は、をご覧下さい。しかし3分8円では利益はほとんど無いはずですが、ODNやDIONの顧客切り崩しが狙いなのでしょうか?

99.03.29
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