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政治の研究No.163
外国ブランド志向の源流

 バブル時代を境にして、女性の外国ブランド志向が高まったと言われます。とくに化粧品・皮革製品・衣類ですが、これを外国かぶれなどと揶揄する人が少なからず存在します。果たして、正しいでしょうか?
 「高級志向」はともかく、「ブランド志向」は良い傾向であります。外国ブランド志向は、内国ブランド低迷の裏返しです。舶来品という理由で外国ブランドを重視するのではなく、品質・付加価値を考慮した結果として、外国ブランドが選択されたというのが正しいでしょう。

 化粧品は、「再販売価格維持制度」という規制によって、長らく少数企業による寡占市場が形成されてきました。1997年3月の規制解除後も、販路を独占し安売り店を閉め出すなどして、価格維持に努めました。平たく言えば、定価販売を維持するために奔走し、消費者利益を高める努力を怠ったと言えます。ラインナップが豊富で、品質も良い外国ブランド化粧品に、若い女性が群がるのも当然でしょう。
 皮革製品は、国内に大きな企業が育たなかったこともあり、割高で低デザインという評価が定着しました。良質の製品は量産ベースに乗らず、悪貨は良貨を駆逐するのとおりに、悪質の製品が量産されてきました。皮革製品は、外観や価格で品質を評価するのが難しく、デザイン性の好みも難しいことから、高デザインで良質の外国ブランドが売れるのは仕方ありません。また、輸入品が極めて割高になることも、国内市場に対する不信感を植え付けています。
 衣類は、大手アパレルも誕生したものの、規模拡大に伴い品質を落としたブランドが多く、消費者の信頼を長く保ち得ることが難しいです。ファッション雑誌が、意図的なブームを煽ったり、流行サイクルの短期間化を図ったこともあり、安かろう悪かろうのイメージが定着しています。幸いにして、中小アパレルに良い企業が育ちましたが、あまりに非力です。スーパーマーケットも、プライベートブランドは「ドル箱」に位置づけ、消費者からの搾取を継続しました。ようやくユニクロブームで、良心的な大手国内ブランドが出現したと言えるでしょう。

 海外の大手メーカーが次々に上陸しています。都市部の一等地に店舗を構えて、上得意客である日本人に攻勢を掛けています。百貨店の借家住まいから自社ビル取得へ動いているメーカーもあります。国内メーカーが消費者の信頼を取り戻し、国内ブランドの良さを強調していかない限り、外国ブランドに蹂躙される日は遠くありません。イメージ戦略が短期的効果しか生まなくなっています。従来型宣伝の賜ですが、この方針を転換しない限り、価格や品質面での消費者訴求は不可能です。
 日用品を見るならば、やはり同様に国内メーカーの消費者軽視が原因でした。化学洗剤の原価は、きわめて安い事実を知らせず、海外商品の流入により原価を裸にされたことがダメージです。医薬品も同様で、代わり映えしない新薬で食いつなぎ、応用薬ばかりに専念したしっぺ返しが訪れています。

 本テーマを「政治」で扱ったことは、国内メーカーが消費者軽視に走った理由が、日本の保護行政にあったためです。数多くの規制を施し、海外メーカーに参入障壁を構築してきました。規制に守られたメーカーは、高コスト体質のまま競争も十分にせず、安穏としたぬるま湯経営を続けてきたのです。消費者による選別の目が厳しくなっていますが、依然として規制により守られることを欲しているメーカーが多々あります。
 政府が真に国内メーカーの存続を望むのであれば、まだ体力のある現段階で、国内企業に活を入れ、奮起を促すべきです。規制は必要最小限とし、寡占状態を利用した横暴には、不正競争防止法等で応え、適正なペナルティも課しましょう。我々国民が、安心して国内メーカー製商品の消費者となれるべく、市場改革を進めて欲しいと考えます。

02.06.23

補足1
 再販売価格維持制度とは、商品の信用維持や販路統制を目的として、昭和28年に導入された制度で、国民生活に密着した商品であり、安売・乱売により品質劣化等が懸念される商品を対象に指定してきました。
 指定商品は、指定再販物と法定再販物に分けられていました。前者は医薬品や化粧品、後者はレコードや書籍です。医薬品や化粧品は、さらに品目の絞り込みが進められ、規制緩和を生じてきました。1997年3月には全ての指定再販物を廃止しました。現在は、法定再販物の廃止による制度自体の廃止を目指しています。
 全国規模での流通が十分に機能しなかった当時に比べ、現在では品質や販路での課題は解消が進んでいます。レコードも書籍も再販期間が短く設定されるなどし、緩やかに廃止に向かっているようです。

02.06.23
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