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政治の研究No.134
女帝を容認するべきです

 皇太子妃が待望のご懐妊ということで、マスメディアは大はしゃぎです。皇室の慶事に盛り上がるのは良いですが、随分とプレッシャーを与えているのも事実です。公式行事を手控えて、丈夫で元気な和子を授かれば十分だと思いますが、親王(男子)出産に対する期待が大きすぎるようです。その精神的なストレスが、悪い結果を招くと困りますので、暖かく見守る必要があるでしょう。

 現在の皇室に、皇位継承権者は7名あります。これは明治時代に制定された皇室典範という旧法の規定により、「皇統に属する男系の男子」が継承するという規定に基づくものです。この「男系の男子」については、今上天皇との血の濃さを問わないようですが、それでも宮家の男子に限定するのが一般的な解釈です。
 明治時代は多くの宮家が在りましたので、多数の「男系の男子」がありました。しかし戦後の臣籍降下によって、宮家が大幅に縮小されました。現在は、秋篠宮・常陸宮・三笠宮・桂宮・高円宮の5家しかありません。皇室で最後に生まれた男子は、秋篠宮であり、かれこれ35年間も男子は誕生していません。このままでは、皇位継承権者が居なく成るというマスメディアの慌てぶりも分かります。

 実際のところ、今後に「男系の男子」が誕生する可能性が高いのは、皇太子と秋篠宮ぐらいで、一人や二人の男子が誕生したとしても、無事に成人して皇位を継ぐ可能性を考慮すると、皇統が絶える可能性があります。昔であれば、側室を迎える選択肢もあったでしょうが、現在の一夫一婦制に従えば、外聞がよくありません。「男系の男子」に拘ることは、非常に危険だと言えます。
 歴代の天皇には女帝の先例があり、8人ありました(補足1を参照)。いずれも後継天皇へのリリーフの意味合いが強く、「男系の女子」でありました。その後に「女系の男子」が相続した例はありません。そういう意味では、「男系の男子」というルールは守られてきました。

 しかし、世間でいう「万世一系が崩れる」というのは正しくありません。万世一系については、日本史の研究第02回で述べていますが、「一つの王朝がただ一つの王統によって受け継がれる」という意味ですので、「女系の男子」の誕生を否定するものではありません。少なくとも飛鳥王朝以前では女系も男系も同格で見られていたようです。当時は同族結婚が多かったと言うことも理由にあります。后妃が女帝に冊立された例も多いですし、内親王という呼称も皇位継承を前提にしたものです。
 日本では幸いにも「女系の男子」を迎えることなく現在に至っていますが、男系であることが純系である証左でもないので、遠縁になる三笠宮系に皇統が移るよりは、今上天皇の系統で皇統が存続する方が美しいと思います。明治時代の男尊女卑の考え方を改め、女帝を積極的に容認する体制を作るべきではないでしょうか。

 もちろんながら、「男系の男子」の不在を理由に、皇統途絶を選択することも良いでしょう。天皇は象徴になっていますから、象徴が必要か不要かは国民に判断させても良いと思います。国民が不要と言うのであれば、敢えて女帝や「女系の男子」による相続を容認する必要がないのですから。

01.05.27

補足1
 8人の女帝とは、飛鳥時代の推古に始まり、奈良時代の皇極(斉明)・持統・元明・元正・孝謙(称徳)、江戸時代の明正・後桜町の各天皇となります。斉明と称徳は、重祚(退位したのちに事情があって再即位)した天皇であり、皇極と孝謙それぞれと同一人物です。したがって、歴代の天皇としては10代が女帝ということになります。このほか、仲哀天皇の皇妃とされる神功皇后を女帝とする意見もあります(明治になってから、神功を歴代に数えなくなっています)。
 ところで、推古天皇即位の際に、天照大神が女性であったことから、天孫として「男系の女子」が継いだ先例としたそうです。神話の世界ですが、一考の価値があると思います。

01.05.27

補足2
 古来から万世一系を守っている王家に、英国があります。イングランド王国を建国したウィリアム1世以降、何人かの女王を挟みながらも一系を維持しています。女系の男子による相続もありましたし、女王の夫君が王位を得たこともあります。英国では何度も王家の名前が変わっています(現在は、ウィンザー家)が、これは女系の男子が王位を継ぐと同時に、父系の王家に名を改める慣習からきたものです。チャールズ王太子が王位を継げば、一番新しい事例となります。

01.05.27
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