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政治の研究No.39
軍事衛星って必要なの?

 ミサイル事件については第35回で触れましたが、な〜んか、変な議論をしていますよね。ミサイルを迎撃するシステムを作るとか、軍事衛星を打ち上げるとか、この経済危機をそっちのけにして、いい加減な話です。でもポン太の場合、軍事は素人なので・・・どこまで書けるでしょうか。

 軍事衛星には、攻撃衛星と偵察衛星とがあります。攻撃衛星は今の自衛隊には持てませんので、偵察衛星ということに成りますね。さらに偵察衛星は早期警戒衛星と探索衛星(いわゆるスパイ衛星)があるわけですが、どちらの衛星を保有したいのかよく分からない議論がされています。
 まず早期警戒衛星の場合は、常時日本周辺を監視する必要から静止衛星であることが望まれますが、上空36,000キロメートルという高高度であるため、サーモグラフィなどでミサイルの軌跡を追うことしかできません。米ロ間の話ならともかくとして、北鮮と日本の間の距離では軌跡を探知したらすぐに日本国内に命中するわけですから、ミサイル迎撃の役には立ちません。あくまで北鮮から打ち込まれたことが分かるだけです。日本には報復するようなミサイル兵器は無いわけですし、その一発が東京に命中すれば自衛隊を指揮する者が不在となって、、、何の役にも立ちません。ちなみに今回の事件では合衆国とロシアとがミサイルの軌跡を確認したそうです(ロシアは北鮮に頼まれてチェイサーの役割を果たしていたと言われています)。要するに米国からデータを貰えばこと足ります。
 つぎに探索衛星の場合は、いろいろ難しい問題があります。探索衛星は200〜800キロメートルの低高度を周回するもので、定点観測には適しません。またその衛星は北鮮だけではなく、周回軌道上の全ての国を探索できるのですから、周辺諸国が良い顔をするとは思えません。また、合衆国の探索衛星は20センチ四方の物体が視認できる(もちろんデータ処理をしての話です)と言われていますが、その解析処理に必要な予算は膨大で、北鮮一国のために投入して良い予算ではありません。もちろん人員もです。さらに、相手のミサイル施設などが確認できたとしても、それに対する対策は何らあるわけではなく、北鮮が先制してきたからといって、報復する手段がないのですから、やはり無駄です。相手の実状が分かれば分かるほど、より強力な兵器を入れないといけない、、、という議論になってしまいます(たとえ相手の設備が張り子のトラであったとしてもです)。

 ここまで調子よく議論が進んできた背景には、早くから防衛庁独自の軍事衛星を持ちたかった・・と自民党が考えていたことの現れです。いままでは名目がはっきりせず、5年前のノドン事件の場合でも、射程距離は名古屋あたりまでだったため、そう強く主張していなかったようです。今回のテポドン(って誰が名付けたのかな?北鮮は衛星打ち上げを主張していたのだけれど)はついに東京を完全に射程に収めたので、首都機能防衛という大義名分が現れたってことなんでしょうね。官庁も一斉に協力を申し出ているそうで、農業・森林監視(農水省)、国土開発(建設省)、環境監視(環境庁)、災害監視・資源調査・地図作製(国土庁)、違法行為監視(警察庁)など多目的利用をしたいということなのだそうです(衛星を使わないでできていることも多いですし、違法行為監視にはまず法整備が必要な気がします)。自民党はさっそくプロジェクトチームを立ち上げたそうですが、どんな議論になりますかどうか・・・。
 今回の軍事衛星議論には、合衆国は概ね賛成なのだそうです。軍事的理由よりも、経済的理由からのようで、一基当たり数百億円という高価な衛星を、場合によっては数基買ってくれる日本政府はお得意さまってことで期待しているのです。しかし何度か衛星打ち上げに失敗しているNASDAに任せて大丈夫なのでしょうか。使う前から使用不能・・・などとバカな話にしないで欲しいものです。

 少し話は違いますが、今回のテポドンは弾道ミサイルであると言われています。有名なトマホークは、レーダーに引っかからない低空飛行型の巡航ミサイルでありますが、捕捉さえできれば迎撃は可能です。しかし弾道ミサイルは、一旦大気圏外までロケット・エンジンで飛び出してから、ほぼ垂直に目標へ落下してくるミサイルです。予め高レベルの哨戒体制にあったとしても、防ぐの難しいと言われています。今の日本では防ぐこともできないのですから、無駄金は使わないでもっと社会に役立つことにお金を使って欲しいと思います。

98.09.26

補足1
 第33回の「宇宙は誰のもの?」を書いたばかりなのに、日本まで宇宙を軍事利用しようとするとは残念です。どんなに名分を付けたところで、所詮は無駄金です。北鮮の出方を政治的にどう押さえ込むかを議論するのが先決ですのに、ナンセンスな話です。自分達が軍事衛星を打ち上げたら、北鮮が一層刺激されてどんな行動を取るか・・・について知恵が回っていないのは残念な話です。そもそもハードウェアだけで国防が成り立つという発想が幼稚です。それを運用できるソフトウェアの整備を怠っている今の自衛隊には、、、ネコに小判、ブタに真珠ですよね。

補足2
 合衆国は弾道ミサイルを迎撃するために、戦域ミサイル防衛(TMD)構想というのをブチ上げています。いくら金をつぎ込んで迎撃に成功したとしても、それをくぐり抜ける新たな兵器が開発されるのは時間の問題で、しかも合衆国が制宙力第33回参照)を確保するための片棒を担がされるに過ぎません。協力を求められた際には、資金の問題で協力できないと回答したそうですが、さっそく来年度から予算計上することになったそうです。。。どんどん軍事大国化して行くなぁ、大丈夫か今の日本は。むしろ自衛隊を正規の軍隊に格上げして明確な組織化と定義付けをしておいた方が安全かも知れません。なし崩し的に軍隊モドキが肥大化するのは危険な徴候です。

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