ぶ ら っ く ら い と

 真っ黒なステージで、青白く浮き上がる手袋・・・。とある関西圏のダンスチームのショーを観たときに、強い感動を得ました。今でも記憶に残っているので、余程に強烈な印象があったのでしょう。そのタネは手袋になく、特殊な照明にありました。

ブラックライトの仕組み

この特殊な照明は、「ブラックライト」と呼ばれています。皆さまも、聞き覚えのあるライトだと思いますが、実物を目にされる機会は・・・少ないですか? ブラックライトは、「近紫外線」と呼ばれる帯域(波長:0.3〜0.4ミリメートル)の光を発します。可視光線の外側なので、人間の目には見えませんし、紫外線のように人体に悪影響を及ぼすこともありません。

この目に見えない光が、蛍光物質を含む物体に照射されると、蛍光物質が一旦吸収して、すぐに単色光を放出します。その原理は、蛍光物質の励起エネルギー・・・云々とかいう小難しい原理ですが、とにかく定まったエネルギーの蛍光を発するのだそうです。近頃のワイシャツには白色系の蛍光塗料が含まれるので、ブラックライトを浴びると青白く光ります。冒頭の「タネは手袋にない」は半分ウソで、手袋には蛍光物質が含まれていたのです。

蛍光物質の発光色は、千差万別です。可視光でも、不可視光でも、異なる波長の光エネルギーを吸収して、定まった波長の光エネルギーとして放出する性質があります。オレンジ色の物質は、必ずオレンジ色。レモン色の物質は、必ずレモン色。違う色に発色することはありません。可視光線を照射してしまうと、放出光の方が暗めなので、目立ちません。ブラックライトの不可視光を照射するところに、巧いアイデアがあるわけです。

ブラックライトの応用

ブラックライトの性質を利用したものは、色々とあります。例えば、イベント会場での案内板。薄暗い場所に蛍光塗料で案内を書き、ブラックライトを照射して表示するモノがあります。商品タグに蛍光塗料でバーコードを印刷して、見えないバーコードというのも実用化しています。日本銀行券は、日本銀行の丸印に蛍光物質が含まれていて、真贋の判定に使われます(普通は、紫外線を照射しますが)。カラオケルームに、コソッと設置されているのを観たこともあります。

こんな楽しいものを舞台でも使おう、というのが冒頭のショーだったのでしょう。もう20年以上も昔の話でしたが、最近でも使われています。コーラス・シティの「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」では、手袋と靴下と仮面(マスク)に蛍光物質を仕込み、ラインダンスがありました。ふよふよと靴下が浮かんだり、手足が見え隠れしたり、不思議な感覚に誘われました。中村龍史プロデュースの「マッスル・ミュージカル」では、蛍光物質を含んだ体操着のダンサーがクルクルと回転し、体操着だけが宙を回転するように観せました。

また、劇団ふるさときゃらばんの「天狗のかくれ里」では、大木に集まる野鳥や小動物たちをカラフルな蛍光色でアレンジし、子供達に大受けでした。始めは、電球か何かで光っているのかと思いましたが、ブラックライトによるものでした(スタッフに確認済み)。他にも、ブラックライトを絡めた演出は色々あります(骸骨の浮き出る衣裳とかね)。

 ブラックライトは、確かに面白い演出です。しかも、ライトはさほど高いモノでもないので、スポットとしては楽しいです。しかし、1作品で繰り返し使うと・・・飽きられるので、難しいです。