第134回の延長です。日生劇場で、某アイドルのミュージカルを観てきました。ショーとして面白いものでしたが、ミュージカルとしては物足りない仕上がりでした。作品紹介を書くとボロクソになるので、今回はコラムだけです。
一級のスタッフ
ではあります。日頃からコンサート等で良いスタッフを使っているためか、舞台美術・衣裳・照明は良いです。今でも日本を代表する、女性アイドルグループですから、その辺りに不安はありません。本格劇場でもあり、二階ステージに可動式階段が左右2基、遊園地のセットも派手で良い雰囲気でした。紗幕(ライトを前方から当てると隠れ、後方から当てると透ける、薄手の生地で作った幕)もどきの衝立を多用したのは、拙かったです。
オープニングではフィナーレ級のナンバーを投入し、オーディション採用を中心としたダンサー達を使っての派手な演出でした。フィナーレは、フィナーレなりに派手でありました。脚本は、よくあるハッピーエンド物語でしたが、今風の雰囲気がある練り込んだモノでした。寒いギャグは、止めて欲しい〜〜ですが。それにしても、難病や名ダンサーを安直に採用しましたね。
二級の芝居
アンサンブルは、それなりにフォローを入れていました。山形氏という名優も存在感がありました。でも・・アイドルだけに下手です、芝居。舞台慣れはしていますし、度胸も一流なのですが、科白はカタコト・棒読みという感じでした。科白と科白の不自然な間も、気持ちが悪いです。表情から真剣さ・目一杯というのは分かるのですけれど、何となく半端です。
また、ハードなダンスナンバーは、口パクでした。ソングナンバーでは、頼りない発声も多く、声量不足が目立ちます。何よりも、可愛い唱いをするために、苦労もしていたようでした。ミュージックの選定は良く、演歌などバリエーションを入れる努力もありましたけれど・・。演技同様に、ぎこちなさが目立ちました。ただし、フィナーレ直前にヒット曲の連打があったので、声を温存したのも理由でしょう。
ダンスは派手です。身軽ですし、オリジナル曲は振りも慣れている印象です。ビデオほどには迫力がなく、全体で揃うというところがありませんでした。個々の動きは、良いところもありましたけれど。
支えるファン
当然ですが、熱烈なファンが詰めかけていました。ペンライトを色とりどりに持参し、これを派手に振り回して大応援してました。オリジナル曲では手拍子もあり、立ち上がってジャンプだのコールだの振り映しがありました。コンサート慣れしているのか、ファンのモーションの方が揃っていて、不気味です。いえ・・圧倒されました。
ファンの出すパワーは強烈でありました。今ひとつ冴えない(とポン太は思う)アイドルの歌と踊りでも、ファンの発する強烈なパワーを受け取って増幅されると、凄いのです。テンションが上がって、思い思いの行動に走っているアイドル達が、ファンと一体になって絶叫などを始めると、物凄いパワーが立ち上ってきます。それに感応したファンも、ボルテージが上がりっぱなしで大変でした。
ファンサービスもあり、疲労感漂うほどのファンの声援も受け、無事にステージは閉幕しました。やれやれ、です。しかし、アイドルのコンサートを観た中では、かなり良いランクを上げたい心境です。いい経験をいたしました。
「ネコも杓子もミュージカル」というのは、時期尚早でしょう。ダンスは今風の派手なものでも、レベルから言えばプロダンサーに及びません。歌もアイドル調では、厳しいでしょう。話題作りとしてはともかく、今後は多く続かないことを祈っています。
- 上記アイドルグループの二作目は、2002年に二度目のチャレンジをしました。こちらは本来のアイドル路線に沿った作品でしたので、改善されていました。とくに台詞回しなどが改善されていました。しかし同じ事務所が、2003年に2本の新作ミュージカルを投入します。粗製濫造の典型的パターンですが、高額チケットが奪い合われるように売れたそうですので・・・頭が痛いです。(2002.12.23)
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