小劇場系では、俳優がスタッフを兼ねることが一般的です。キャストは、チケットノルマや出演料を負担するので仕方がないとしても、スタッフには報酬が必要になるためです。これを「キャスト兼任スタッフ」と呼ぶことにします。
兼任は、大変
数人の劇団員であれば、出演者の募集、会場の手配、チラシの作成・印刷・配布から始めることに成ります。作品のプロットを決め、脚本を書きます。演出の段取りを決めつつ、大道具や小道具の作成、衣裳の手配(または制作)、チケットの作成・販売などの作業が入ります。渉外活動もあれば、内部調整もあります。
全て準備が終わっても、当日のスタッフは別途必要です。キャストと受付・誘導などを兼任するのは、無謀ですから。知人縁者を集めて、にわかスタッフとして協力を求めます。しかし、大事なスポンサーでもある点に注意が必要ですね。彼らにもチケットを買って貰わないと(笑)。
無事に公演が終わっても、チケット代等の精算、大道具の解体・移送、衣裳や小道具の廃棄や保管、アンケートの整理・アフターケアなどが必要です。募集出演者やスタッフには、礼金を払うのも必要ですね。それを俳優と兼任でするのは、無謀と言っても良いでしょう。
定まる役割配分
同じメンバーで劇団活動を続けると、それぞれ得意分野が決まってきて、役割配分が定まります。明確なリーダーがあると別でしょうが、衣裳が得意な人、振付が得意な人、演出が得意な人、計算が得意な人、交渉事が得意な人・・という分担ができてくるでしょう。劇団が大きく成ってきても、引き続き担当責任者だったりします。
そうして決まってくる役割配分で、さらに適性があると、それなりに有名になります。他劇団等でも助っ人を頼まれたり、スタッフで雇われたりするわけです。自分の劇団内でも、キャストであることを止めて、スタッフ専任に成ったりもしますね。これは理想型でもあります。
最初から、得意分野を持ち寄って劇団を作る場合は、別ですね。脚本家や演出家が、劇団を主宰するというのはよく見掛けます。脚本兼演出兼作詞兼作曲兼振付、なんてマルチ能力に恵まれた人もあります。能力に恵まれなくても、全部仕切る人もありますけれど(おっと、失言)。しかし、マルチな役割を担当する人は、主役も演じたがります。多くの場合は、詰まらない出来になるので、止めて頂きたいです。
責任は明確に
別に兼任が悪いとは言いません。優れたキャストは、演技やダンスや歌唱に優れています。その優れた技能を、他人に教えることは有意義です。グレードがアップします。できるだけエゴは除いて、純粋に指導に当たるのなら、良い相乗効果が期待できます。自分だけ見せ場を作ろうとか野心があると、キャストかスタッフかのどちらかが拙くなります。
知人に、自ら劇団を主宰して主役を張る人が、数名あります。TVタレントだったりして、その看板を使って客を集める人も多いのですが、良い作品を見掛けたことがありません。自分が脚本家兼演出家だったりすると、自分の技能が客観的に評価できませんし、甘く手ぬるい仕上がりに成るのです。ご本人は気づいていないケースが多いですが。
責任を意識している人は、キャスト名とスタッフ名を変えていたりします。一方を平仮名や片仮名にする例が多いですが、愛称や本名・旧姓を使う人もあります。一人の人間だけど、キャストとスタッフでは、呼び分けてくれって意思表示だと思います(よく分かりませんが)。反対に、偽名を使いまくって、ほとんど自分でやっている事実を伏せる人もあります(ねぇ、スミ○ガ▼さん)。
いずれにしても、商業劇団への途を歩んでいくのであれば、良いキャストを入れて、自分はスタッフに専念されるのがいい選択だと思います。小劇場系の間は仕方がないですが、いつまでも自己中心的では、劇団のためにも自分のためにも成らないと思います。キャストに未練があれば、スタッフは有能な人を招聘しましょう。他劇団の作品を目にしていれば、いい人を発見するでしょう。
|