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経済の研究No.162 |
ポイントカード制度 |
日本マクドナルドが1997年秋に始めたマックポイントカードが、2000年3月末に廃止されるそうです。近頃ポイントカードを導入する企業は多くても、廃止する大手企業は耳にしないだけに、気になるところです。少し検討してみたいと思います。
■ ポイントカードの原形
ポイントカードの原形は、スタンプカードだと考えています。店舗が独自に発行するスタンプカードに、買上げ金額や利用回数に応じたスタンプを押印し、スタンプカードが全て埋まれば、金券や記念品と交換されるシステムです。ただし、個店やチェーン店で限定されるため、使い勝手が悪いのが難点です。
商店街などで大規模にスタンプ制度を導入する場合、一番に困るのは加盟店の不正です。例えば、得意客には2倍のスタンプを押したり、架空名義のスタンプ帳を作って景品を引っ張ったり、と制度を根底から揺るがしかねない問題があります。これをクリアしたのが、ブルーチップやグリーンスタンプに代表される、シール状のチップです。加盟店は所定コストでチップを購入し、これを顧客に配布するわけですから、誤魔化しはできません。
消費者にとっては、チップが共通化されればされるほど利便性が増し、これを所定の台帳に張り付けて収集します。所定の冊数になれば景品と交換したり、買い物の足しにすることが可能で、それを目標にして加盟店での購入に励むことに成ります。最大手はブルーチップですが、加盟店の規模が大きくなればなるほど、基本コストが縮小して多様なサービスを提供することが可能になるようです。
スタンプカードやチップは、加盟店からすれば管理が簡単なシステムですが、顧客にとっては不便なシステムです。スタンプカードであれば、商品購入時に携帯する必要があります。またチップであれば、台帳に張るために無くさず持ち帰る手間があります。商品の引き替え等にも、日数・有効期限・冊子の管理など不便があるようです。パンや飲料のメーカーが、キャンペーンとして短期間にシールチップを配布するのは有効であるようですが・・・。
■ 電子ポイントカード
今のように、パソコンなどで顧客管理を始めている中で、スタンプカードなどは時代遅れに成りつつあります。いっそパソコンでポイント管理すれば、顧客の利用頻度や購入傾向などを分析することが可能になり、DM送付など効果的な営業が可能になるわけです。そこで考えられたのが電子ポイントカードです。プラスチックカードやラミネートカードを顧客に配布し、会員コードごとにポイントをカウントしていくシステムです。
大規模に始めたのは、首都圏のカメラ量販店だと記憶しています。最大手のヨドバシカメラは、常時3%相当分のポイントを蓄積し、いつでも商品購入に充当できる電子ポイントカードを導入し、成功させました。販促セール時には、5%還元を謳うなどしていました。当初は消費税導入に抵抗して消費税を取っていませんでしたが、のちに消費税を取る代わりに8%を還元しています。普通はポイント相当分だけ商品価格が上がるところですが、少なくとも東京圏では秋葉原量販店と同水準の価格で勝負しています。
電子ポイントカードは、競合量販店が互いにサービス内容を競ったことも影響し、配布枚数も利用金額も大きく膨らんだ様子で、それはそのまま収益に直結しているように見えます。照明機器に強みを持つヤマギワは、CD・AVなどソフト媒体の購入者向けにポイントカードを配布しています。ソフト媒体ではスタンプカードが今でも多いですが、いち早く電子ポイントカードを導入したことから、競合店舗を引き離すと同時に、地方顧客も大きく取り込むことに成功したと聞いています。
■ 大躍進のマイレージ
航空三社がマイレージカードを導入したことが、新しい展開を見せています。もともと航空機の利用客に対して、利用回数や利用距離に応じた還元を行うために導入した制度です。電子ポイントとして利用実績を積み上げ、景品ではなく無料航空券と交換できるようにしたことがビジネス客に受けて、利用に弾みをつけました。
大手三社が顧客囲い込みを狙ったキャンペーンを展開し、付加サービスを拡充させたことも魅力を増し、提携クレジットカードの利用分もマイルに換算されることなどもあって、一般客の加入を拡大したようです。何より、還元率の高さが挙げられるでしょう。現実には日頃から高い航空運賃を払わされているのですが、1%にも満たない一般クレジットカードとは比較にならない還元率を目当てに、せっせとポイントを稼ぐ顧客が増えています。航空三社の立場では、本来の空席をマイレージ顧客に占めさせるだけなので、それほど収益に影響は無いようです。
マイレージカードの人気に目を付けた他業種も、便乗するために航空三社にすり寄りました。ホテルやレストラン・国際電話・レンタカーなど旅行関連の業種のほか、書籍・携帯電話・保険・住宅に至るまで多くの業種が、加入や利用と引き替えにマイレージポイントを加算するプレミアムキャンペーンを行っています。航空三社としては提携企業が増えればポイント販売の収益が増え、付加サービスの魅力も増し、顧客のニーズを満たせる利点があります。
唯一の誤算は、思ったよりもポイントの利用が高かったことでしょう。空席の目立つ路線での利用を促す努力をしているものの、基幹路線で使われるポイントが多いことや、競合のためにポイントの大盤振る舞いを行ったことが祟って、結局ポイント特典を縮小することになったようです。2月からの通常運賃値上げの影響などを見つつ、また調整がなされると思われますが・・・。
■ マックポイントカードの廃止
マックポイントカードは、東京都と神奈川県で導入された電子ポイントカードです。100円で1ポイントとし、15P・35P・65P・100Pの各中間ポイントを通過するだけで、ハンバーガーやオリジナルグッズの引換券を渡すというシステムです。販売価格で見れば10%を超える還元率で、マクドナルドを日常利用する顧客には好評でありました。当初は顧客の囲い込みを意図したようで、圧倒的な店舗差を利用して競合FCを引き離すつもりが、思ったほどの費用対効果が得られず撤退するようです。
地方限定で導入したカードであり、壮大な実験という位置づけであったのなら、問題は無いでしょう。しかし、顧客を大きく裏切ったことは間違いありません。代替サービスを検討中としているものの、同水準のサービスが提供されないのであれば、顧客は離れます。これまでは同様サービスを投入していた競合FCが、いずれも追従してこなかったことも誤算であったようです。質より量路線に転換したマクドナルドと、量より質路線に転換した競合FCとに、二極分化が進んでいることを象徴してしまったようです。
紳士服の青山が、鳴り物入りで電子ポイントカードを導入したようです。これからは業界最大手の企業で、電子ポイントカードを武器にシェア拡大を図る傾向が増すでしょう。しかし、還元率を高く設定しすぎたり、従来の顧客サービスより実質的に低下させたり、途中でサービスを打ち切ったりすることは避けるべきです。設定が妥当かどうか、体力的に応じられる水準か、顧客のニーズを満たせる付加価値があるか、マックポイントカードを反面教師に、よく研究して貰いたいと思っています。
■ むすび
ポイントカードの発行は、顧客情報を開示して貰えるという意味で、店舗と顧客の親密度を増すことができるメリットがあります。店舗から見れば顧客の来店回数や買上げ金額の増加が見込めるはずですが、顧客が店舗を選別する目が厳しくなることも考慮するべきです。ポイントカードを導入すると同時に、商品価格が上がったり、セールの中身が貧弱になったり、接客の質が下がったりすれば、自ずと信用を失って顧客は離れます。
ポイントカードを万能の道具とは考えないで、あくまで顧客との親密度を上げるツールと考えて、たゆまぬ営業努力をして欲しいと思います。そういう意味では、還元率の高さよりも、質の高さを追求した無理のないシステムを導入して欲しいものです。
00.02.27
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補足1
マックポイントカードですが、カードの回収とお詫びの意味を込めて、4月以降ポイントカードを「ビッグマック特別ご招待券」に交換するとしています。制度廃止にそれなりの代償を払おうという姿勢は評価できると思います。
また最近では、ハンバーガーとチーズバーガーを平日半額にするサービスを導入しています。以前から原価割れが囁かれているハンバーガーですが、知人の話では材料費で見る限り原価を割っていないとのことです。「毎日ひっきりなしに、ハンバーガー1個のテイクアウト客が来るならば、間違いなく日本マクドナルドは赤字で潰れる」と物騒な話をしておりました。
店舗数と認知度と価格では、競合他店に圧倒的な差を付けている同社ですが、質の低下がどこかに回っているはずです。本文中では二極分化と書きましたが、いよいよ株式上場を決めたことですし、無理のない事業展開を行って欲しいです。とくに顧客の期待を裏切らぬよう努力して欲しいと思っています。
00.02.27
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補足2
マクドナルドの1999年12月決算が発表されました。売上高は3,994億円で前年比4.4%増となり、過去最高を更新したそうです。延べ来店者数は2割増加の11億人ということですので、客単価は15%以上の減少を示した計算になります。店舗数拡大と低価格路線で支える構図が見て取れます。
一方で、経常利益も314億円の過去最高を更新したとのことで、経費削減など利益確保の努力は怠りないようです。低価格と利便性で来店効率を高め、できる限り高利潤のセット商品を販売するという従来型手法をどこまで維持できるか、壮大な実験でもあるようです。
また新規出店を急ピッチで進めてきたツケは、大丈夫なのでしょうか。まだまだ新しい店舗が多いのでしょうが、改装費や人件費の増大を吸収できる体質が確保できていないようでもあり、一層の売上高・経常利益拡大を図る努力が必要でしょう。
00.04.08
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補足3
クレジットカードの利用で溜まるポイントは、従来1年間有効が常識でした。1年間にポイント交換できなかった残りポイントは、全て破棄されるため、カード会社ではポイント還元に要する経費を節約できたのでした。
カード会社により違いがありますが、総発行カード枚数に対するポイント交換をするカード枚数は、概ね20%以下というデータがあります。残る80%強の顧客がポイントに無頓着であるのでなく、多くは交換できない水準。ポイント制度により、一定の利用努力を促すものの、期限切れが動機付けを弱めていたと思われます。
カード各社では、ゴールド会員を対象に2年間に延長したり、一定ポイント以上を条件に翌年度に繰り越したり、航空会社マイレージと提携したり、柔軟性を持たせ始めています。セゾンカードは、ポイントの有効期限を撤廃して無期限にしました。基本的には無期限であることが重要であり、数社が導入しているように利用金額に応じたボーナスポイントを付加するのが良いと考えます。
02.05.19
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補足4
補足2の続きです。2002年12月期のマクドナルドは、連結経常利益が前年比9割減という厳しい数字になっています。過剰な店舗も急ピッチでの閉鎖を迫られる他、客に飽きられたと言われています。結局のところ、マクドナルドはポイントカードを廃止後、これに代わるサービスを導入しませんでした。ハンバーガー平日半額セールも急遽中止して実質値上げに踏み切ったことが応えています。
狂牛病問題などもありましたが、身勝手な値上げと、顧客無視の営業姿勢にあるとされます。やむなくハンバーガー59円サービスを導入し、瞬間風速は過去最高の来店数を得たものの、その後は低迷中です。新規に打ち出す商品はいずれもレスポンスが悪く、売り上げ低迷に歯止めが掛からないとか。そもそもが創業者一族が株式上場益を最大限狙えるべく営業費用削減に動いたことが敗因とか。株価は2001年7月の上場から一貫して下げています(すでに6割安の2,000円です)。現在のところ、全く業績回復の見込みが立たない様子です。
せっかく顧客の囲い込みが成功し掛かったというのに、顧客を甘く見たために、その顧客に裏切られたようです。
02.12.15
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補足5
ローソンが発行する会員カード「ローソンパス」が好調であるそうです。開始4か月で会員数100万人を突破し、顧客の囲い込みに効果を発揮しています。入会金・年会費無料で、年齢制限が無いのが売り物。100円で1ポイント加算に加えて、1精算で1ポイント加算(100円未満の端数調整の代償と思われます)であるのが魅力です。
同様のポイントカードは、ファミリーマートも会員カード発行を開始していますが、敢えてクレジット機能がリボ払い限定であるのがミソです。クレジット機能は18歳以上限定ですが、少額リボのみのため、多くは現金払いで利用されます。したがって、他社の1回払い可能なカード(従来のOMCカードも含む)のようにカード払いの比率が大きく増えないメリットがあります。コンビニでのカード決済はローソンが先陣を切ったため、高額の買い物にカード払いの比率が増え、加盟店の収益をカード会社が掠める形になっていました。
これに加えて、日替わり商品の優待割引や、クリスマスケーキ・年賀状などの優待割引も魅力とされます。新規発売の弁当や総菜、肉まんなど、会員限定にキャンペーンを実施することで、効率的な顧客囲い込みと、購買動向の正確な把握が可能になっています。また、ローソンチケットの優待予約も魅力です。チケットぴあとの提携を進める他社では打てない企画のため、ローソン包囲網を打破する武器にも成りそうです。
さて、肝心のポイントの利用度ですが、あまり割の良い交換レートで無いようです。ローソン側のメリットも大きいので、もう少し交換レートを良くあって欲しいと思います。実際にポイントを使う段階で、ユーザーに飽きられることが、ポイントカードの泣き所ですので。
03.01.03
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補足6
マクドナルドは、ホームページ上で会員向けに情報発信や限定サービスを実施していた「@Mc」を2003年1月末付けで休止しました。新規会員登録の停止やサービスコンテンツの一部閉鎖を実施したため、本当にリニューアルが行われるのか疑問があります。都合の良いときだけ会員情報を集めてサービスし、面倒が増えると廃止する姿勢は、相変わらずです。顧客囲い込みのポイントは、継続性だと思いますが。
補足4の続きです。59円バーガーによっても顧客は戻らず、チーズバーガー(79→120円)とフランクバーガー(75→150円)を大幅値上げするそうです。その代わりに、ダブルチーズバーガー(220→179円)を値下げするそうです。新セットのマックチョイスでは、ハンバーガーセットに割高感を持たせて、、チーズバーガーセットとの価格差を詰めるようです。59円バーガーのみは看板として残す意向ですが、100円割れバーガーからの事実上の撤退です。露骨な客単価引き上げ策だけに、さらなる顧客離れを生む可能性があります。
今のマクドナルドに必要なことは、小手先の価格変更ではなく、継続的な顧客重視策だと考えます。これまでの会員サービスでコンタクトを受けた会員向けに、リーピーター用サービスを再投入し、これを息長く続けて見せることが必要でしょう。リピーターの多くは、ノーマルハンバーガーに魅力を持っていると思えません。
03.02.08
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